- 下話
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「ガード…甘いんじゃないの?バーテンさん」
「…酔ってるんですか?お客さん」
突然の出来事にびっくりしたのは一瞬。唇の感触ですぐにしんごだとわかった。
「酔ってないよ」
「酔ってるでしょ?」
「じゃあ酔ってる」
しんごの体が私の体を扉に押し付ける。私はそこから逃れようと、手を間に挟んで胸を押す。でもびくともしない。その体勢のまま、しんごは両方の腕を私の顔の左右の扉にあて、さらにかっちり拘束される。
「っ!…離してっ」
しんごの目を見られないまま抵抗する。
「やだね。やっと捕まえたんだ」
そう言ってまた唇を重ねてくる。
この手で彼女の頭を撫でたんでしょう?
この腕で彼女の肩を抱いたんでしょう?
この唇で………
彼女を愛したんでしょう?
私は入ってこようとする舌を、歯を食いしばって阻止する。
しんごは私の口内を犯そうとするのをやめ、首筋に顔を落としてきた。扉に押し付けていた腕は片方は肩を抱き、もう片方は胸をまさぐる。
「やだっ…やめて。こんな所でやだっ」
あれほど焦がれた感触。夢見たのはこんなトイレの中じゃない。
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14/01/31 02:40:33