- 下話
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「あの…私、本当にそんなんじゃないですから。だって私結婚してるし、子供もいますし!」
ここまで言い切って私は携帯のトップ画像を見せた。子供が笑ってる写真だ。
「………なぁんだー。何かごめんねー変なこと言って。忘れて、今の。」
私はもう何も言い返す気もなく黙っていた。
「じゃああたし、忙しいから行くね。あ、別にかとりさんにあたしの事は言わなくていいから。ケーキでもがっついといて」
モデルは体を翻し華麗に去って行った。
おとぎ話の住人だったはずの私は急にこの会場内の異物になった気がして、たまらずお皿を置いて会場を飛び出した。
「ゆり!?」
こちらに戻ってきていたしんごが私の様子に気づいて追いかけてきた。
私は浮かれていた事が恥ずかしくなってさらに逃げた。今の顔、しんごには見られたくない。
「待って、ゆり!ねえ待ってよ!!」
足の早いしんごにすぐ追い付かれ、手を掴まれた。
「待っててば!」
ハァ、ハァ…
二人で肩で息をする。気がつけば隅っこの非常口まで来ていた。私は振り返ることも出来ずに非常口の扉を見つめていた。
「ねぇ、どうしたの?何かあった?」
「………」
何も話せない。
「こっち向いてよ。」
しんごは少し強引に私の手を引っ張り振り返らせた。
また私は涙を流してしまっていた。- 0
13/11/25 12:06:58