- 下話
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パーティー当日、旦那は子供を連れて実家に泊まりに行ってくれた。
「久しぶりの同窓会、ゆっくりしておいでよ。」
同窓会と嘘ついちゃった。旦那は優しくて家族としてはいいのだけど、男女の仲というのはもう大分薄れていた。だからといって他の男性にときめいていい理由にはならないけど、嘘をついてしんごと会うことの罪悪感は無かった。相手はアイドル、芸能人だし、テレビの中の人物に恋をしても浮気にも不倫にもならない。私に不貞を働いているという意識は全く無い。そもそも何もシてないし。今日も二人で会うわけでは無いしね。
私は美容室で髪だけではなくメイクまでしてもらい、しっかりドレスアップして待ち合わせ場所へ向かった。
年末ともなると寒い。少し早く着きすぎちゃったなー、と思いながら肩をすくめて立っていると、目の前に先日見たワゴン車が停まった。
「おーい」
中からしんごが小さい声で呼んだ。私はすぐにスッと開いたドアから乗り込んだ。
「こーんばんわっ。来てくれてありがとう。早めに着いて来るとこ見てようと思ったのに、ゆりさんの方が早かったね。そんなに今日楽しみだった?」
「もちろんです!かとりさんにまた会えるのが楽しみで楽しみで、今日までがすごく長く感じました。これ、ありがとうございます。変…じゃないですか?」
あのしんごと、かなりスムーズに話せてる。やった、私!
「素敵だよ。今日はメイクも気合い入ってるねー。いつものナチュラルメイクも可愛いけど、今日はすごく綺麗だ。俺、ドキッとしちゃったよ(笑)」
さすが芸能人、といったところか口がうまいなー。女が喜ぶセリフをさらりと言ってくれる。独身の若い子ならこういうのでもうメロメロに落ちちゃうんだろうけど、私は違う。大人だし子供もいるし妙に現実的というか、これは社交辞令、リップサービスなんだという事はちゃんと理解してる。嬉しいんだけどね。
「お上手ですね(笑)素直に喜んでおきます。」
「本気にしてないでしょ?本当だよ。ささ、行こうか。」
ワゴン車が走り出す。- 0
13/11/25 08:42:46