- 下話
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………よし、綺麗になった。もうあんな情けない顔はしないぞ。
鏡を見ながら、私は顔をパンパンと叩いて気を入れ直した。
西エレベーターは少し離れた所にあった。人気も全く無い場所で、パーティー会場やロビー、フロントとは違いシーンと静まり返ってる。館内のBGMだけが上品な音量で聞こえていた。
エレベーターに乗り込み、他のボタンと少し離れて上の方にある最上階のボタンを押す。
少しの期待と不安の気持ちが入り交じる。
まさか、部屋に連れ込むパターン?それともこれはドッキリで扉が開いたらたくさんの人とカメラがあるとか?
間抜けな顔にはならないよう、背筋を伸ばしてエレベーターが停まるのを待った。
チーン
扉が開いた所に、しんごがいた。もちろん、一人で。
「やっ(^_^)/
あ、パンダ直したな(笑)てか何でエレベーターで仁王立ちしてんの?」
背筋を伸ばしたつもりが、気合いが入りすぎて仁王立ちになってしまってたようだ。
「いちいち面白いね、ゆり。」
呼び名が『ゆり』に固定されてる。また胸がドキドキしてきた。しんごに会ってから私は何回ドキドキしてるだろう。心臓がもたないわ。
廊下の途中に扉があった。しんごは壁に付いているカードリーダーにカードを通した。あれはカードキーかしら? 扉のロックは解除され、私達が通過した後またロックされた。
もしかしてこれVIPフロアってやつ?
床の色までがそこから変わっていて、いくつかある部屋の扉までが高級そう。ガードマンらしき人が立っている扉もある。どこかの要人の部屋かしら?
さっきまでのときめきと違い、テーマパークに来たみたいなドキドキでしんごの後に着いていった。- 0
13/11/25 14:25:19