- 下話
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「!……………さっきのあの子…何か言われた?」
私は否定も肯定も出来ず、ただ泣いていた。
「あの子ねー、前に携帯番号聞かれたけど教えなかったんだ。あの子だけじゃなく、俺ほとんど人に携帯番号って教えないんだけどさ。もしかしたらそれで怒らせちゃったのかな?ごめん、俺のせいで嫌な思いさせて。」
今度は首を横に振った。
「おわびさせてって言ったのに、また泣かせてしまって本当にごめん。」
しんごは掴んだ手に力をこめた。
「いいんです。少しの間、夢の中にいるようでしたから。ありがとうございました。私、帰りますね。」
そしてもう二度と会えないだろう。シンデレラの魔法は0時前に解けてしまった。溢れる涙は止まらない。
「ダメだ。そんな顔したまま帰らせないよ。
………ねえ、ちょっと待っててくれる?今度はちゃんと、すぐに戻るから。」
「?ここで…ですか?」
しんごは目だけを上に向けて少し考えていた。
「うーん、そうだな…。10分後に西エレベータで最上階まで来てくれる?西エレベータしか最上階に行けないから気を付けて。パンダのままでいいから。」
そう言ってしんごは小走りでどこかへ行ってしまった。
……………パンダ?
慌ててファンデを取り出し鏡を見る。
ああ、パンダだ…。確かにこのままじゃ帰れないな。私、しんごに恥ずかしいとこばかり見られてる。
約束の10分までの間、パウダールームで直してこなくちや。- 1
13/11/25 13:40:29