- 下話
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外に出ると空が薄暗くなっていた。
「飯行こうか」
エリア内に海が見える個室のレストランがあった。
「ひぇぇ……」
メニューを見ると、普段行くファミレスに比べゼロが一個多い。全部しんごにお任せしよう…。
「何か飲む?」
お酒のことかな?
「いいよー。しんご飲めないし。私だけ飲んでも…。」
「いいのいいの。好きなもの頼んで。今度は俺が奢るから(笑)」
「恐縮でーすm(__)m」
私はグラスワインを一杯だけ頼み、ウーロン茶のしんごとグラスを合わせた。
部屋の片面はガラス張りになっていて、手前に中庭のような物がありその向こうが海だった。夕陽は既に沈んでしまっていたけど外はまだ完全に暗くはなってなく、海がうっすら見える。
外の景色と目の前のしんごで私は胸がいっぱいになっていたが、ふと時間が気になって時計を見る。まだまだ大丈夫な時間なんだけど、日が暮れてくると少しだけソワソワしてしまって食事があまり進まない。主婦の癖かな。
「どうしたの?」
そんな私を見てしんごが顔を覗きこむ。
「ん?ううん、何でもない。これ美味しいねー」
純粋にこの時間を楽しまなきゃ失礼だ。
「家の事思い出した?」
ドキっとした。
「……ごめん。」
「俺、ゆりに悪いことしてるかな」
しんごが箸を置き、視線を落とす。
「ううん、違う。ごめん!」
私は思わず少し腰を浮かせた。
「謝んないで!」
しんごの声が大きくなり私の動きを制止する。
「……謝んないで。俺の勝手だけど、ゆりに悪いことをしてると思って欲しくないんだ」
「…うん………………うん…」
私は静かに頷いて腰を降ろす。
「食べよう。まだ連れて行きたい所あるから」
「うん……」
私は黙って料理を口に運んだ。すごく美味しいはずなのにあまり味がわからなかった。- 0
13/12/16 02:56:05