官能小説得意な方! へのコメント(No.284

  • No.275 慎吾ママ

    13/12/13 14:45:19

    町内から出ると私はもう主婦では無くなっていた。後ろめたさは無くなり、そわそわする気持ちが強くなって更に足は早まる。


    会えたら?会えなかったら?

    バスに乗っても頭の中はしんごのことでいっぱいになっていた。





    あの場所に着いた。しんごと再会した場所。あの日はワゴンで待ち伏せしていてくれたようだ。パーティーの日待ち合わせしたのもここ。私がいつでも来れる「あの場所」はここしか思い付かなかった。

    時計を見るとまだ10時半にもなってなかった。道行く人が増えてきてみんな忙しそうだ。こんな所に突っ立ってるのは自分一人で、邪魔にならないように道路沿いの街路樹にもたれる。


    寒い…。本当にここでいいのかな?それよりも本当に会えるのかな。あの百合の花は私に繋がっていたんだろうか?


    時計は全然進まない。待ち時間が増えていくにつれて不安も募る。車道を見てもあのワゴンは現れない。


    一日待つつもりでいたけど本当に待てるかな。このままここにいたら押し潰されそうだ。それでもし会えなかったら………。


    暗くなった街から、自分ががっくり肩を落として立ち去る姿を想像して思わず首を振った。

    そんな状態で一時間くらい過ぎただろうか…私は向かい側の歩道にふと目をやった。道路を挟んだあちらの方に、私と同じように道行く人の波の中立ってこちらを見ている人がいる。帽子にメガネにマスクの少し怪しい格好。人混みの中頭一つ出ていて、やたら存在感がある。



    「…………………!しんっ」


    私は思わず叫びそうになって口を押さえた。その人は私の視線を受けてさっと踵を返し、建物の間の路地に消えて行った。

  • No.284 慎吾ママ

    13/12/13 23:16:45

    >>275続き


    「待っ………!」

    しんごだ。見間違えるはずない。あれはきっとしんごに違いない。


    横断歩道まで廻るのももどかしくて、私は車道に飛び出した。


    パッパァー!!

    「ごめんなさいっ」


    信号間近で速度を緩め出しているとはいえ、走る車の間をぬって横断するのは非常に迷惑だろう。でもそんなのお構い無しに私は頭を下げながら車道をまたいだ。


    来てくれた。来てくれたんだ。やっと会えたと思ったのに、見失いたくない。


    私はついさっきしんごらしき人影が消えた路地に入った。

    向こうの方に路地の突き当たりが見える。そこを曲がって行った足がスッと見えた。


    名前を呼びたいけどこんな所で大声で呼ぶわけにはいかない。


    「待って!ねえ、待ってーっ」


    ん?……何かデジャヴ。つい最近こんな場面無かったっけ?


    少し考えながら私は走り、突き当たりを曲がる。表通りと違い、人通りは全く無い。私はハァーっと息を吐いてキョロキョロと周りを見渡しながら先へ歩く。


    思い出した。あの夢だ。


    しんごにびっくりするほど冷たくあしらわれた、あの場面とシンクロした。あの表情を思い出して私は立ち止まり、うつ向いた。


    「ふう………」


    ため息が漏れたその時、後ろに人の気配を感じた。


    まさかナカイ君?なわけ……


    振り返ろうとしたその瞬間、


    「ばぁっ!!!」

    ガバァーっと私の脇の下から2本の手が飛び出し後ろから両胸を鷲掴みにされた。


    「ぎゃーっぎゃーっぎゃーっ!!!」

    「シーっシーっシーっ!!!」

    あまりにびっくりしてとんでもない声をあげた私の口を、大きな手がふさぐ。

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  • No.286 慎吾ママ

    13/12/13 23:57:43

    >>284
    続き

    この声……


    口と胸をふさがれ、後ろからすっぽり包まれるような格好のまま私は目を後ろに向けた。


    「どーもっ」


    しんごだった。マスクだけ外していて、あの大きな口の両はじをニッと上げて笑う、笑顔のしんごがそこにいた。


    嬉しくて私からも飛び付きたかったが今の状況に少々満足がいかなかった。


    「ちょっ、もうっ」

    パッとしんごの腕の中から逃げ出し、胸を押さえて振り返る。しんごは拳銃を向けられた人みたいにさっと両手を上げる。


    「何でいきなり胸っ!てか何で逃げるのっ」


    「ごーめん、ごめん。驚かそうと思って。女の人って本当にびっくりするとキャーじゃないんだね。ギャーなんだ(笑)それともゆりだけかな?」


    私はまだ自分の胸を押さえたまま、むーっとむくれてしんごを睨む。


    そんな私を見て、しんごは優しく微笑む。そしてむくれた私の顔に手をあてた。


    「ごめんね。普通に会うのが照れくさかったんだ。ほっぺ冷たいね。結構待っててくれたの?」


    むくれていた私の顔はしんごの手の温もりで緩む。

    「良い友って言ってたから、お昼かなと思ったんだけど…ちょっと早く着いちゃったかな」


    「良かった。メッセージ通じてて。見ててくれてるかとか、伝わってるかとか、心配だったんだ。はい」

    しんごはポケットから缶のホットカフェオレを出して渡してくれた。


    「あ、ありがとう…」


    両手で受け取る。温かい…。


    「カルアじゃないけどね(笑)」

    イタズラっぽくしんごが笑う。私はカルアミルクを飲んだ時の事を思い出し、カァっと頬を赤らめた。

    そんな私をしんごはそっと抱きしめた。背の高いしんごに抱きしめられると、私は顔まですっぽりとしんごの腕に覆われる。コートの上からでもしんごの温もりが伝わってきて、私は目を閉じる。

    「会いたかった…」


    私も…


    そう言いかけて私は口をつぐんだ。家族の顔が一瞬浮かび、言ってはいけない気がした。返事の代わりに、カフェオレを持ったまましんごの背中に手を回した。

  • No.477 慎吾ママ

    13/12/25 01:47:07

    まとめました。こうして見ると本当に長いです。お付き合いいただいた方々、ありがとうございましたm(__)m


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