- 下話
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ビルに照らされた番組のロゴマークを一通り写に撮り、彼は今このビルの中で撮影中なんだと改めて再認識する。
さっき会えた余韻と共に、思わず立ちすくむ。
「さっ、帰ろ!」
後ろ髪を引かれる思いはあったが、私はタクシーを探す為に道路沿いへ向かった。
ふと、ラーメン屋さんが目に入る。
なんか緊張がほぐれてお腹すいたなー、そういえば今日はずっと緊張しっぱなしで疲れた。
ちょっと食べて帰ろかな。
ラーメン屋に入り、醤油ラーメンとビールを頼んだ。
ラーメン屋に一人で入るのも初めてだけど、一人で店でビールを頼むのも初めてだった。
でも今日はそんな気分。
店内に客は少なく、一人客のサラリーマンがちらほらいる程度だった。
ラーメンを食べながらビールを飲んでると、友達からメールがきた。
「終電間に合ってもうすぐ家着くよ~!ゆりも危ないからいつまでもいないで気をつけて帰りなね!」
まさか一人でラーメン食べながら飲んでるとは思わないだろうな。
思わずクスッと笑う。
でも、本当に帰ろ。
少し酔っ払ってしまったのか、ふらつきながら席を立ち、会計を済ませた。
「さぶっ!」
店を出て、冷たい風に思わず身を縮めた。
タクシーを止める為、手を上げる。
ここはタクシーがたくさん走っているのはわかっているので、道路に向かって適当に手を上げる。
「‥!!!???」
手を上げた私の手を後ろから誰かにつかまれた。
「ゆり‥」
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14/09/20 02:32:01