官能小説得意な方! へのコメント(No.1741

  • No.1741 ゆり

    14/09/20 01:41:16

    周囲がざわめき出す。



    白いシャツ、黒いネクタイ、グレー地に柄の入ったスーツに身を固め、丁寧にセットされた、少し茶色がかった髪の男性がこちらに来た。



    彼だった。



    彼はこちらを見て、いつもの笑顔で手を振ってくれた。


    ざわつく人々に、警備員がよりいっそう警備を強化する。


    ガラス越しなので声は聞こえない。
    どんな放送内容なのかもわからない。

    でもなにやら撮影は続いた。


    「ゆりー!」

    友達が私の肩をギュッと握る。


    すぐさま撮影は終わり、彼はエレベーターに乗った。


    もう行っちゃったんだ‥


    周囲の人々は一斉に捌ける。


    「ゆりー!少しだったけど会えて良かったね!かっこよかったね!」

    「うん、本当にありがとう!」

    「詳しい話しはまた今度ゆっくりね!私終電ギリギリだから。」

    「駅まで送るよ!走ろ!」

    「ゆりはタクシーでしょ、せっかくなんだからみんなみたいに思い出に写撮っときなよ。」



    番組のロゴマークのライトが、テレビ局のビルを綺麗に照らしていた。



    「うん、そうする。」


    私がそう言うと、友達は駅に向かって早速と走り出した。


    明日も早いのに、無理をして私に付き合ってくれたんだ。


    「本当にありがとう」


    友達の走って行く背中を見ながらそうつぶやいた。

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