- 下話
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いつもと同じ帰り道。
私は右手で慎吾の手を引いて、左手で重いスーパーの荷物を下げて、パートで疲れた体を奮い立たせて家に向かった。
毎日、同じことの繰り返し。
虚しさを感じるけど、慎吾だけが私の唯一の生きがい、心の支えでもあった。
「ママー、お家かえったらガイム見たい!」
慎吾の笑顔はキラキラしてきれいだ。
そして、親バカって思われるかもしれないけど、なかなかの美少年。
名付けの由来が大好きな芸能人なんて、少し恥ずかしいけど、
ご本人に負けない位イケてるかも(笑)
実際、半年前、友人の結婚式で青山に行った帰りに表参道を歩いていたら、
スカウトマンに声をかけられた。
あやしいなーとは疑ったけど、宣材費用、レッスン代などいっさいかからないという話だったので、とりあえず所属だけさせて見ることにした。
アパートに着いてドアを開ける。
慎吾は保育園のカバンを放り投げ、手慣れた手つきでDVDプレイヤーを操作して、お気に入りの番組の録画を見始めた。
「もー。慎吾、先に手洗ってきなさいよー」
慎吾のカバンを片付け終わると、作っておいたスープを温め直している間に、パート中にチェックできなかったメールのチェックをする。
迷惑メール14件…それから…
「チャイルドスターエンターテイメント」
慎吾が所属しているキッズモデル事務所だ。
【お疲れ様です。
ファイブスター佐久間です。
3歳から5歳の所属モデル対象で、男性アイドルグループSMAqのPV出演のオーディションがあります。
エントリーの方は…】
!!!!
私は慌てて佐久間さんにコールバックした。
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14/01/16 04:16:16