特攻隊、貴重映像 へのコメント(No.303

  • No.302 続き

    13/03/28 18:36:10

    >>300
    ■6.肉親を思う歌■
     戦場の夫が妻子を思い、また妻が夫を思う歌はとりわけ心を打つ。

    家を出づる時
    よめる父の顔
    見覚え居よと乳児(ちご)にいへど
    ちご心なく打ち笑みてのみ

    出征の時に、これが最後かとも思い、父の顔を覚えていてくれよと、我が子を抱いて見つめるのだが、幼児はあやされているのかと思い、無心に笑うばかりである。

    片言に
    君が代歌ういとし子の
    すがた写して
    夫(つま)におくらむ  
    夫の出征の間に成長して、片言で君が代を歌う子供の写真を、夫に送ろうというのである。

    旅順攻囲雑詠

    たまたまに
    稚児とあそべる故郷の
    ゆめおどろかす
    大砲(おおづつ)の音  

    故郷で我が子と遊んでいる楽しい夢を、突然破るのは野戦の大砲の音であった。

    新年山

    つはものに
    召し出されし
    我(わが)せこ(夫)は
    いづくの山に
    年迎ふらむ

    この歌は、陸軍二等兵卒大須賀昌二の妻まつ枝のものである。
    明治38年の春の歌会始の入選歌で、両陛下の前で披露された。

    出征した夫を思う妻のまごころは、多くの国民の共感を得たであろう。

    歌会始めという「公」的な場で、このような「私」の情が歌い上げられた所に、「私」を大切にする「公」というわが国の伝統が窺われる。

    続く

  • No.303 続き

    13/03/28 21:38:31

    >>302
    ■7.「私」に根ざした「公」■

    山桜集の圧巻は、猿田只介という教師出身の一兵卒が残した次の 連作である。

    出征の折よめる

    待ちわびし
    召集令をうけしより
    心おどりぬ
    なにとはなしに

    君のため
    国の為なりとはいへど
    老いしちち母
    思はぬにはあらず

    勇ましき
    働きせよといひさして
    涙に曇る
    母のみことば

    ふた親に
    妾(わらわ)つかへむ国のため
    いざとはげます
    けなげなる妻

    門の辺(べ)に送る
    み親ををろがめば
    泣かじとすれど涙こぼるる

    手をつかへ
    なみだぐみたる教子(おしえご)の
    姿を見れば胸さけむとす

    いざやいざ
    朝日のみ旗おしたてて
    ふみにじらなむ
    露の醜草(しこぐさ、ロシアにかける)

    召集令を待ちわびるという「公」の気持ちも、いざ出征となると、「老いしちち母思はずにはあらず」と「私」の気持ちが頭をもたげる。

    母親も「勇ましき働きせよ」と言いさしては「涙に曇る」

    このような「公」と「私」の葛藤の果てに、ふたたび「いざやいざ」 と戦場に向かう。

    一首目の「待ちわびし召集令」という気持ちは、「公」に向かったものだが、それはまだ残される家族への「私」の情は十分入っていない。

    しかし老いし父母や妻、教え子らの姿を通じて、自分にとって大切な人々を守ろうという「私」の情の後に生まれ出た最後の 「いざやいざ」の歌こそ、「私」に根ざしたより深い「公」への気持ちである。

    自分の家庭、家族を守っていたい、という「私」は、人間だれでもが持つ自然の人情である。

    しかし皆が小さな「私」だけを考えていれば、アムール川で虐殺されたシナ人のように「私」すら守れないことになってしまう。

    「私」を守るためにこそ、「公」に向かわねばならない時もある。

    「公」を無視した「私」だけでは利己主義の社会である。

    「私」を無視した「公」だけでは、全体主義である。

    山桜集や歌会始の入選歌にも見られるように、日露戦争は一人一人の将兵が家族への「私情」を吐露しつつ、それを守ろうと「公」のために立ち上がった戦いであった。

    極東の黄色人種の小国が

    世界最大の陸軍を持つ白人国家に

    勝った最大の原因は

    国民一人一人が「私」に根ざした

    「公」に立ち上がった強さであろう。

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