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>>300
■6.肉親を思う歌■
戦場の夫が妻子を思い、また妻が夫を思う歌はとりわけ心を打つ。
家を出づる時
よめる父の顔
見覚え居よと乳児(ちご)にいへど
ちご心なく打ち笑みてのみ
出征の時に、これが最後かとも思い、父の顔を覚えていてくれよと、我が子を抱いて見つめるのだが、幼児はあやされているのかと思い、無心に笑うばかりである。
片言に
君が代歌ういとし子の
すがた写して
夫(つま)におくらむ
夫の出征の間に成長して、片言で君が代を歌う子供の写真を、夫に送ろうというのである。
旅順攻囲雑詠
たまたまに
稚児とあそべる故郷の
ゆめおどろかす
大砲(おおづつ)の音
故郷で我が子と遊んでいる楽しい夢を、突然破るのは野戦の大砲の音であった。
新年山
つはものに
召し出されし
我(わが)せこ(夫)は
いづくの山に
年迎ふらむ
この歌は、陸軍二等兵卒大須賀昌二の妻まつ枝のものである。
明治38年の春の歌会始の入選歌で、両陛下の前で披露された。
出征した夫を思う妻のまごころは、多くの国民の共感を得たであろう。
歌会始めという「公」的な場で、このような「私」の情が歌い上げられた所に、「私」を大切にする「公」というわが国の伝統が窺われる。
続く- 0
13/03/28 18:36:10