嵐(妄想・小説) へのコメント(No.4224

  • No.4224 ハル

    10/10/08 16:54:50

    こんにちは。
    ニノ。

    『泣かないで』

    好きだったあの子が最後に俺に言った言葉。もうどのぐらい前だろう。あの子がいなくなって…。

    いくつもの季節が巡り、毎日の忙しさに無駄な事を考えなくなり、気がつけばまたこの季節。この季節になるとふとあの子の声が聞こえる気がするんだ。

    青い空のどこかから冷たい風に乗って。

    「泣くかよ」

    それが本心なのかどうかも分からなくなっていた頃。
    休憩中にふらっと立ち寄った公園のベンチに一冊の本が置いてあった。表紙からして子供向けのすべて平仮名で書かれた本。

    いつもならこんなのに見向きもしないのに、今日は何故だか分からないけどその本に惹かれるようにページを捲った。

    本の中の可愛らしい女の子が蝶々に言う。

    また会おうね

    本の中の可愛らしい女の子が白い花に言う。

    また会おうね


    離れていても思っていればまた会える。離れていても心は伝わる。本の中の女の子はそう言いたいんだろうか。

    子供の世界は綺麗だな…。

    『あっ!あった!』

    足元から小さな高い声が聞こえてきた。視線を下げれば女の子が俺の手にある本を指さしている。この子の忘れ物か…。

    「はい。どうぞ」

    俺の言葉にニコリと微笑み本を受け取った女の子は、俺をじっと見つめる。その澄んだ瞳に何故か懐かしさを覚え、それと同時に隠していた本当の気持ちを見抜かれる気がした。

    その時だ。

    『なかないでね、おにいちゃん』

    足元から聞こえる言葉。

    隠していた気持ちが揺らぐ。小さな子供の一言に俺の中の何かが溢れ出す。涙なんて必要なかったんだ。なのに…。

    ママーと駆け出す女の子の先には

    いつか見たあの子の姿。


    そっか。

    俺、泣きたかったんだ。

    泣かないでと言われたあの時を忘れる事を恐れた、心の中の俺が声を上げて涙を流す。

    俺、ずっと泣きたかったんだ、きっと。



    おわり



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