嵐(妄想・小説) へのコメント(No.503

  • No.503 長文

    SN3J

    10/07/02 06:33:24

    花火編

    「花火…見たいなぁ。」遠くを見ながら呟いた。彼は、私の願いを叶えてくれた。仕事を空けて、時間を作ってくれた。

    人混みの中、道行く人々と暑さで汗ばんだ肌をぶつけながら歩いて行く。
    「ほら、おいで!」彼が先を歩いて道を作ってくれる。はぐれない様に手を伸ばす。
    「手、離すなよ。」
    ギュッと握る彼の手は、夏の暑さで、じっとりと湿っていた。

    「ねぇ、このまま近くまで行く?」
    かき消されそうな彼の言葉。
    「お任せする。」と雑踏に負けないように声を張った。

    彼は、笑顔で私を見ると、急に手首を強く掴んで早足で歩き出した。
    人の波に逆らいながら進んで行く。
    時々振り返って私を気にしてくれた。

    住宅街を通り抜けて、坂道を登って行く。少し早足で手を引っ張って誘導する彼は、ほとんど喋らない。
    私は、ただ彼の背中を追いかけていた。

    「着いた。」
    公園の小高い丘の上。下を見下ろせば、さっきの人混みが小さく広がる。
    「座ろうか?」
    彼がベンチを指差した。

    遠慮がちにベンチに腰かけると、「もっとこっち、来て。」とグイッと肩を抱かれた。

    「ごめんね。痛かったでしょ?手。」
    そう言って、さっきまで強く握られていた私の手を擦った。
    「赤くなってる…ごめん。」
    ほんのり色付く彼の手の跡にキスをしてくれた。


    「やっと、ゆっくり話せる…。」
    彼が遠くを見て呟いた。

    「俺ね、堪えらんなかった。…知らない奴がお前に触れる事。」
    視線をこちらに向けると「嫉妬してみっともねぇな、俺。」と苦笑いをした。

    私の頭を抱き寄せると、「こっちの方が落ち着く。」と微笑んだ。

    「あ…。」そっとはだけた浴衣の胸元を直してくれる。
    「そこ、見ていいのは、俺だけ…ね?」
    浴衣を正すと頬にキスをしてくれた。

    「浴衣のお前…色っぽいなぁ。」
    横顔を見つめられて、顔を背けた。

    花火が上がる音が響いた。
    目の前に広がる花火は、とても綺麗で、彼の汗ばむ手を握りながら見入っていた。

    パッと咲いては、儚く消えて行く花火は、とても綺麗で…切なくて…
    急に不安になって彼に身を寄せて存在を確かめた。


    「俺はどこも行かない。ずっと傍にいるよ」
    優しい彼の声が不安を拭ってくれた。

    気が付くと私の目から、涙が溢れていて、心配そうに彼が覗いていた。
    頭を撫でてくれる彼の手の温もりで、すっと涙が引いて行く。

    「涙止まったら、帰ろっか」
    そっと抱きしめられた。

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