- 下話
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寝室では既に旦那がパンツ一丁で私の方のベッドに入っていた。
バタン…
扉を閉め、私も部屋着を脱いでベッドに入る。長い夫婦生活、お互い脱がし脱がされることも無かった。
横になると同時に旦那が覆い被さり、キスをしてきた。
こんなだったっけ?
久しぶりに交わす旦那とのキスは、まるで初めての相手とするような違和感。思わず唇が固くなる。
唇の感触…もう少し大きくて、厚みがあって、熱くなかったっけ…
鼻をつく匂いも違う。その違和感を拭い去るように旦那の背中に手を回し、ぎゅっと抱き締める。厚みが違う。肌の感触が違う。自分の体に触れる、お腹の弾力が違う。
その違和感は私の心をどんどん蝕み、耐えられなくなりそうになったのを目をぎゅっと閉じてこらえた。
旦那がキスをしながらショーツに手を入れる。
………濡れてない
意識を何とか下に持って行くが、どうしても濡れない。旦那が指を差し込んで何度も動かすが、ざらりとした指の感触が痛いだけだった。
原因はわかっている。私が悪いんだ。
旦那は別に下手なわけではなく、淡白ではあるが至って普通だと思う。子供を産むまでは問題なくこなしていた。
だから問題なのは私。頭ではいけないことだと理解出来ていても、躰が、心がついていかない。
でも……駄目だ。
不倫という罪を犯してしまった自分が、旦那と子供の為に出来ることは何事もなく接することだと思う。絶対に悟られないように、絶対にバレないように。知らない方が幸せとはよく言ったもので、今の生活を守るために私は全力で嘘をつかなければならない。
集中…
旦那を愛している
旦那を愛している
旦那を愛している………
少しだけ…やっと少しだけ旦那の指の滑りが良くなってきた。
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14/01/18 22:55:20