• No.82 続き

    11/11/03 13:29:09

    >>81
    ◇TPPをめぐる路線対立

    野田首相はこれまで一貫して政権運営において「安全運転」を続けてきた。

    党内では融和に努め、外向けには波紋を広げるような重大な政策決定は避けてきた。

    だが、国家を預かる首相の立場にある以上、いつまでも政治決断を先送りし続けるわけにはいかない。

    野田首相が「君子危うきに近寄らず」の姿勢をとったとしても、「危うい」課題の方が首相に近づいてくる。
    その最初の試練がTPP問題だった。

     自民党などの野党内にTPP慎重論が広がったほか、農業関係団体や医療関係団体からも反発の声が上がった。

    だが、もっと深刻なのは、民主党内でも重大な路線対立が生まれたことである。

    民主党内のTPP参加反対派の中心人物である山田正彦前農林水産相は10月23日、記者団から「首相はTPP交渉参加を強行する勢いだが」と尋ねられて、語気を強めてこう言った。

    「何としても阻止する。阻止しなければならない」

     また、民主党と連立を組む国民新党の亀井静香代表も10月5日の記者会見で、「参加しようと言っても、できない。見ていなさい、絶対にできないから。不可能なことができるとは思わない」と大見得を切った。

    続く

  • No.84 続き

    11/11/03 13:35:03

    >>82
    ◇「交渉できる人間がいるのか」

    TPP参加への障害は、これらの勢力の猛反発だけではない。

     10月20日、国会議事堂裏の衆院議員会館にある小沢一郎元民主党代表の部屋を同党の三井辨雄政調会長代理らが訪ねた。

    三井氏は現在、樽床伸二民主党幹事長代行が率いる政策グループ「青山会」の代表世話人を務め、小沢氏とも近い関係にある。

    一方、小沢氏は8月の民主党代表選で海江田万里元経済産業相を支援したが敗れた。

    そんな経緯から、野田首相の動きを静観しているものの、TPP交渉の行方には不安を抱いていた。

    小沢氏は党の政策決定の中枢にいる三井氏に対して、こう忠告した。

     「きちんと米国と交渉できる人間がいるのか。いないのではないか。相手があることなんだから、そこが問題なんだよ」

     TPP交渉に参加することが日本にとって得なのか損なのかという点ばかりが注目されているが、小沢氏はその一歩先の問題を懸念していた。

    つまり、仮に交渉に参加したとしても、他国と対等に渡り合えるのかという問題である。

     小沢氏は竹下政権で内閣官房副長官を務め、盟友である羽田孜元首相らとともに、牛肉・オレンジに代表される日米農産物交渉や建設・通信分野の対米交渉に取り組んだ。

    それだけに米国とのハードな駆け引きの実態、そして、利害が相反する国内各勢力のとりまとめがいかに困難であるかを身をもって知っている。

     TPP参加は、交渉しだいで日本に大きな国益をもたらす。

    だからこそ、野田首相も参加に積極的なのだろう。

    だが、逆に交渉をしくじれば、日本の産業界だけでなく社会全体にマイナスの影響を与える。

    つまり、TPP参加交渉の場で、野田政権は日本に不利な条件をできるかぎり排除し、あるいは不利な項目と取引する形で有利な項目を獲得し、日本が総合的に損をしない状況を作り出さなければならない。

     だが、権謀術数が渦巻く国際交渉の中で、そうした巧みな駆け引きができる人材が今の野田政権にいるのか――。

    これが、小沢氏の問題意識なのだ。

     また、民主党の前原誠司政調会長は「交渉に参加して、そして、それが自らの国益に全然そぐわないものだったら、撤退はあり得る」と言うが、日米同盟関係への悪影響を考慮したときに、それほど簡単なことなのかどうか。

    続く

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  • No.86 続き

    11/11/03 13:40:38

    >>84
    ◇普天間と選挙制度改革

    野田首相が踏み込まざるをえない危険な賭けはTPP参加問題だけではない。

    長年の課題である沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題も決着させなければならない時期が近づいてきた。

    野田首相は日米合意に基づいて名護市辺野古への移設を進めるべく、環境アセスメント評価書を年内に沖縄県に提出する方針を決めた。

    さらに、川端達夫総務相兼沖縄北方担当相、一川保夫防衛相、玄葉光一郎外相らが堰を切ったように次々と沖縄を訪問し、現時点での県内移設に難色を示す仲井真弘多知事らの懐柔に努めた。

    だが、仲井真氏は玄葉氏に対して、皮肉たっぷりにこう言い返した。

     「時間がかかると申し上げているではないか。そう簡単なことではない。政府もそれを理解しないと……。強引にやったとして、本当に辺野古に建設できますか」

     野田首相にとって、選挙制度改革も頭の痛い問題である。

    民主、自民両党は憲法違反の今の状態を解消するため、まず、一票の格差の是正を目指す。

    だが、公明党をはじめとする中小政党は選挙制度の抜本的改革を求めている。

     この問題を解決するために与野党9党が初めて一堂に会したのが10月19日の選挙制度改革協議会だ。

    だが、このスタートの会合で、早くもさや当てが始まった。

     座長を務める民主党の樽床氏は、各党の意見が大幅に食い違っていることを百も承知だった。

    このため、会議の冒頭、慎重に言葉を選びながら話し始めた。

     「本日は会議の運営上、最低限必要なことだけを確認したい。各党の考え方はいろいろあると思うが、それは次の会議で披露してもらい、その上で協議のあり方を話し合いたい」


     回りくどい言い方だが、樽床氏としては最初の会合で、一部の政党が席を蹴って出て行くという事態だけは避けたかったのだろう。

    せっかく各党を協議のテーブルにつけることに成功したのだから、この話し合いの枠組みを空中分解させたくなかったのだ。

    各党はとりあえず樽床氏の提案を了承した。

     まず、自民党の細田博之政治制度改革実行本部長が意見を述べた。

    「違憲状態を解消するため、まず、1票の格差をただすための協議を行ない、次に2段ロケットの2段目として選挙制度の抜本改革を話し合うべきではないか」

    続く

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