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「豚熱」の再確認から5年、終息の見通し立たず…北海道除く46都府県にワクチン接種拡大
読売新聞10/15(日)13:56
家畜伝染病「CSF(豚熱=豚とんコレラ)」の感染が、26年ぶりに国内で再確認されて5年が過ぎた。農林水産省によると、2018年9月に岐阜県の養豚場で見つかって以降、野生イノシシを含め、今月12日までに計36都府県で確認された。感染拡大防止に向け、豚やウイルスを運ぶ野生イノシシへのワクチン接種が進むが、接種の推奨地域は北海道を除く46都府県に広がっており、終息の見通しは立っていない。
ワクチン代、農家に重荷
「発生すると殺処分になり、大打撃を受ける。各農場が接種を終えることが重要だ」。宮崎県内の養豚農家でつくる「みやざき養豚生産者協議会」会長の長友浩人さん(51)は、感染の広がりに危機感を強める。
豚の飼育頭数が全国で2番目に多い同県で豚熱は確認されていないが、今年8月の佐賀県内での確認を受け、9月から接種が始まった。宮崎県の初回接種対象は約70万頭で、完了は11月中旬の見込みだ。
母豚は最大4回、子豚は生まれるたびにワクチンを接種するため、農家はワクチンを打ち続ける必要がある。初回接種では免除されるワクチン代など県への手数料が、今後は1頭あたり70円かかるため、長友さんは「農家の負担を軽減してほしい」と訴える。
ワクチン接種すると輸出停止
輸出先との取り決めで、ワクチン接種県からは豚肉を輸出できない。農水省の担当者は「終息の見通しが立たず、輸出を再開するのは当面難しい」と語る。日本の豚肉はアジアなどで、しゃぶしゃぶやトンカツなどとして人気だが、輸出できるのは北海道のみだ。
鹿児島県曽於市の食肉製造販売会社「ナンチク」は、香港を中心に22年度は前年度比2割増の270トンを輸出していた。今年度は販路拡大を目指していたが、9月に接種が始まり、輸出できなくなった。「一日も早く再開できるよう、政府は海外に安全性をアピールしてほしい」。同社の外山剛・輸出促進部次長は強調する。
野生イノシシも感染
野生イノシシの感染は、本州や四国の34都府県で確認されている。各地で経口ワクチンが散布されているが、感染は続いている。
岐阜県で再確認後、これまでに20都県で豚約37万頭が殺処分された。同県では19年9月以来、養豚場での感染は確認されておらず、担当者は「ワクチンの効果があったうえ、農家の意識の向上で小康状態になっている。農場での消毒や、小動物が侵入できないような施設の補修などを呼びかけ続けたい」としている。
高い致死率「アフリカ豚熱」に警戒
コロナ禍からインバウンド(訪日外国人)や物流が回復する中、農林水産省や自治体、養豚農家は、豚熱より致死率が高く、有効なワクチンがない家畜伝染病「ASF(アフリカ豚熱)」への警戒を強めている。
アフリカ豚熱は長くアフリカで確認されていたが、2007年以降、欧州で流行。18年に中国、19年には韓国で発生し、東南アジア各国でも報告されている。日本国内での感染は確認されていないが、政府は養豚場への侵入を阻止するため、農家に管理の徹底を求めている。
農水省の担当者は「中国や韓国との飛行機や船の定期便が多い九州では、より一層の危機感を持ってほしい」と呼びかけている。
◆豚熱=豚とイノシシが感染する病気。農林水産省によると、人には感染せず、ワクチン接種した豚を食べても健康に影響はないという。
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