• No.75 トピ文の続き①

    22/09/18 09:01:28

     新学期のクラスの自己紹介。自分の番で名乗ると、ひとりの女子生徒が噴き出した。しかも、その笑いが止まらない。中学までは、周りで笑い転げる人はいなかったのに──。

     ただこの時、女子生徒に感じたのは怒りでも悲しみでもなく、共感だった。

     「だって、変な名前って笑われて当然でしょう。王子様だもん」

     そもそも王子というのは「役職」だ。なのに「様」が付いていること自体、おかしいと自分でも思った。

     「よし、改名しよう」。そう思い立った。中学時代、人気漫画「こち亀」こと「こちら葛飾区亀有公園前派出所」を読んで、本名は変えられると知っていた。170巻の「改名くん」の巻。不運な男たちが名前を変えた後、宝くじが当たったり、女性にもてるようになったりして運気が上昇する、というドタバタ劇だ。

     ストーリーそのものよりも、改名できるという社会のルールが心に刻まれた。

     それに、これだけ名前がいちいち注目される状況には、もう耐えられなかった。変わった名前だからではない。

     「単に親が付けた名前が珍しいというだけで目立つなんて、プライドが許さない。名を売るなら、自分の実力で勝負したい」。そのために、自分で自分の名付けをしようと心に決めた。

     「王子は生きづらいだろうな」。両親の知人で、幼い頃から赤池さんを知る甲斐善光寺(甲府市)の僧侶・渡辺光順さんは、名前のことをずっと心配していた。

     明るく、社交性もある赤池さんは、皆から愛されて育った。大人に交じってゲームをすると「僕は子どもだから」と順番を譲るなど大人びた面もあり、本人が築く人間関係には何の問題もなかった。

     だが、「昭和町に王子様という名前の子どもがいるらしい」という「うわさ」は、渡辺さんのもとにも届いていた。インターネット上には、奇抜な名前を意味する「キラキラネーム」の代表例として掲載されていた。社会に出てからは苦労するだろう、という危惧はあった。

     だから、高校生になった赤池さんから「名前、変えようと思うんだけど」と相談された時、「いいんじゃない」と答えた。


    つづく

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