草刈り(鎌)
今、小児科外来が混雑している理由
――小児科の外来が大変混雑していると聞きます。森戸先生のクリニックは、今どんな状況でしょうか?
毎日、これまでにないほど混雑しています。朝の30分で、その日の発熱外来の予約枠が埋まってしまうほど。全国的にも大小たくさんの医療機関の小児科が同じ状況だと思います。これは「新型コロナウイルス感染症」の子供が増えているだけでなく、その他の感染症も流行しているためです。高熱と咳が続く「ヒトメタニューモウイルス」、同じく熱と咳が出る「RSウイルス」、熱と発疹が出る「手足口病」も多く、どれも最初に熱だけが出ると新型コロナと見分けがつきづらく、鑑別に手間がかかります。
――昨年の夏も、本来は冬にはやるはずのRSウイルスが流行しましたが、今年も同じような状況なんですね。
そうですね。ただ、国立感染症研究所のウェブサイトを見ると、RSウイルスの流行は去年ほどではありません(※1)。手足口病も増えてはいますがコロナ禍前よりは少ないし、ヒトメタニューモウイルスは定点観測をする感染症ではないのでわかりません。今、初めて子供の新型コロナウイルス感染者が爆発的に増えたのと同時に、いろいろな感染症の患者さんが同時に発熱外来を訪れるので、大変なことになっているのだろうと思います。これらの感染症のなかで、ワクチンがあるのは新型コロナだけで、罹患(りかん)して大きく行動制限が必要になるのも新型コロナだけなんです。
※1 国立感染症研究所「RSウイルス感染症 定点当たり報告数」
――実際に子供の新型コロナウイルス感染症は増えているのでしょうか?
残念ながら、非常に増えています。新型コロナの「オミクロン株亜系統BA.5」が流行しはじめてから、子供の感染者が急増しました(※2)。こうして子供全体の感染者数が増えれば、入院が必要になったり、重症化したりする子供も増えてしまいます。分母が増えるから、分子も増えるんですね。さらには長引いたり、脳症になったり、深刻な後遺症が残ったりするリスクもあることがわかってきました。今年3月以降にすでに累計で21人の子供が亡くなっていて、基礎疾患のない子供もいます。
重症化というと、どのくらいの症状を表しているのでしょうか?
もともと医療上の定義と一般の定義では、「軽症」「中等症」「重症」の捉え方が大きく違うことが指摘されていました。医療者のいう新型コロナウイルス感染症における「軽症」の定義は、当事者には症状が重く感じられても入院治療が不要な状態です。「中等症」は肺炎などを起こして入院治療が必要な状態、「重症」はECMOや人工呼吸器をつける必要があって死亡する危険性もある状態です。
――だから一般の人が息が苦しくて喉が痛く、ひどくつらいのに「軽症」とされて驚かれているんですね。
そういうことです。今はさらに子供において、医療上の定義と一般の定義がより隔たっているようです。先日、新潟大学医学部小児科学教室のSNSアカウントが「症状がある子供の新型コロナのイメージと実際の比較」という図(図表2)を示し、今流行している「BA.5」の場合は中等症に該当するような肺炎が起こりにくく、入院が必要な子が定義上は軽症になっていることを指摘されていました。その通りだと思います。
――もともと新型コロナウイルス感染症は軽症でもつらいといわれていますが……。
実際の診療においても、発熱していても元気なのはヒトメタニューモウイルスやRSウイルス、手足口病に感染した子供です。新型コロナウイルスに感染した子供は、高熱が続いていたり、喉が痛かったり、倦怠(けんたい)感がひどかったりして、ぐったりしていることが多いのです。大人でも、実際に感染した人が何も食べられないほど喉が痛くなったりして、驚かれていますよね。軽症ならラクというわけでもありません。「新型コロナは、ただの風邪」と言う人がいますが、全然違います。こんなに多数の人がつらい症状に苦しみ、重症化したり亡くなったり、後遺症が残ったりする風邪はありません。
全文
https://news.yahoo.co.jp/articles/264e7b202e367b870b98e025730ce128190cb892?page=3
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