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性差気にせず「いい湯だな」 銭湯の「高い壁」一つの乗り越え方 尼崎でLGBTら向けイベント、実現へ
2021/11/16 16:45
公衆浴場の利用を諦めることが多いLGBTら性的少数者も、性差を気にせず、ゆっくり銭湯を楽しみたい-。そんな願いをかなえるイベントが今月、兵庫県尼崎市内で実現する。「力になりたい」と手を差し伸べたのは、かつて当事者の利用を断ったこともあった同市の銭湯だった。(小谷千穂)
主催するNPO法人「ミックスレインボー」の井餘田(いよた)みのり理事長(53)は、男性として生まれ、今は女性として生きるトランスジェンダー。幼い頃は銭湯に通ったが、約20年前からホルモン治療を始め、体の変化で行けなくなった。「もう一生無理やろなと思っていた」と言う。
多くの当事者にとって、銭湯の利用は「高い壁」だ。公衆浴場は、身体的な性別で男湯か女湯に分けられるのが一般的。「高い費用がかかる性適合手術を受けないと、女性として浴場には行けない」と別のトランスジェンダーの女性は語る。
一方、銭湯側も対応に苦慮している。兵庫県公衆浴場業生活衛生同業組合(神戸市)によると、今年に入り、複数の銭湯でLGBTら当事者から「今から行きたい」と電話があった。
組合の役員会で話題になったが、上部組織の全国浴場組合にもガイドラインはなく、結論は出なかった。「世の中の動きもあるし『どうしたらいいんやろう』という状態」(担当者)という。
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今回のイベントに場を提供するのは蓬莱湯(尼崎市道意町2)。代表の稲里美さん(61)の体験がきっかけだ。
今年5月ごろ、おでん店を営む知人男性が、髪を伸ばしておしゃれをしているのをツイッターで見た。驚いて本人に聞くと「今まで隠してきたけど自由にやりたい」との返答。「身近にそういう人がいて、初めてLGBTについて向き合った」という。
稲さんは以前、当事者の利用を断ったことがあり、心に後悔が残っていた。
井餘田さんの話を聞き、「人一倍、真剣に生きてきたんやろな」と受け止め、「大きいお風呂に入って、癒やされてほしい」と提供を決めた。
同法人のメンバーは7月、打ち合わせのため貸し切りの蓬莱湯に集まった。
「水着もバスタオルもOKにしよう」「脱衣所は仕切りつける?」-。多様な性指向の参加者がいることを想定し、知恵を絞る。風呂は「24時間源泉掛け流し」で、男湯と女湯の間にドアがあるため、違和感があれば途中で移動できることなども確認した。
この日、20年以上ぶりに温泉に漬かった井餘田さんは「幸せ」と目をつぶった。
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初回のイベントは11月の定休日。安心して入浴してもらうため、日付は非公表にする。既に「十数年行けなくて、諦めていた。うれしくて涙が出そう」との声が寄せられている。
井餘田さんは「周りに気を使わず、体も心も一緒に入ってる感じ。ぜひ体感して」と呼び掛ける。
参加を希望する場合、詳細の問い合わせはミックスレインボーまで。メールアドレス(toiawase@mixrainbow.jp)。同法人TEL06・7410・8914
神戸新聞
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202111/sp/0014846430.shtml
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