下間頼廉
国が生活保護の支給額を平成25年から段階的に引き下げたことの是非をめぐる裁判で、大阪地方裁判所は「最低限度の生活の具体化に関する国の判断や手続きに誤りがあり、裁量権を逸脱・乱用し、違法だ」として、支給額の引き下げを取り消す判決を言い渡しました。
生活保護の支給額について、国は物価の下落などを反映させる形で平成25年から平成27年にかけて、最大で10%引き下げました。
これについて全国各地で受給者が最低限度の生活を保障した憲法に違反すると主張して、引き下げの取り消しや国に慰謝料を求める裁判を起こし大阪でも42人が訴えていました。
22日の大阪地方裁判所の判決で、森鍵一裁判長は「世界的な原油価格の高騰などで、消費者物価指数が大きく上昇した、平成20年を物価の変動をみる期間の起点に設定しており、その後の下落率が大きくなるのは明らかだ。また、考慮する品目にはテレビやビデオレコーダー、パソコンなど生活保護の受給世帯では支出の割合が相当低いものが含まれている」と指摘しました。
そのうえで「国の判断の過程や手続きは最低限度の生活の具体化という観点からみて誤りで、裁量権の逸脱や乱用があり、生活保護法に違反し、違法だ」と結論づけ、原告に対する支給額の引き下げを取り消しました。
憲法に違反するかどうかの判断は示しませんでした。
また、慰謝料の支払いは認めませんでした。
平成25年からの引き下げをめぐっては全国30か所で集団訴訟が起こされ、判決の言い渡しは2件目でしたが、違法と判断して引き下げを取り消したのは今回が初めてです。
「勝訴」「保護費引下げの違法性認める」と書かれた紙掲げる
午後3時に法廷で減額を取り消す判決が言い渡された直後には、大阪地方裁判所の正門前で原告側の弁護士らが「勝訴」、「保護費引下げの違法性認める」と書かれた紙を掲げ、集まった支援者から大きな歓声があがりました。
60代の女性は「勝ちました。最高です。絶対勝つと思っていました」と話していました。
原告の1人、新垣敏夫さんは「勝てるとは思っていなかったのでやはりうれしいです。これからも苦労は続くと思いますが引き下げが止まることは大きなことだと思います」と話していました。
原告の男性は「後悔が残るばかり」
原告のひとり、大阪市に住む新垣敏夫さん(66)は建設会社などで働いていましたが、原因不明のめまいに悩んで14年前、仕事を辞めざるをえなくなりました。その後、貯金を切り崩して生活していましたが、8年前から生活保護を受けています。
支給額がおよそ8万円だった生活費の部分が、今回の引き下げに伴って3000円余り減額となりました。
新垣さんは枚方市の高齢者施設に入所していた母親を週1回、見舞っていましたが、往復で1700円かかる交通費を切り詰めるため、訪問の回数を半分に減らしたといいます。母親は先月、亡くなりました。
新垣さんは「母親にさみしい思いをさせて後悔が残るばかりです。支出をおさえるために外出を控えて社会参加もできず、行き着くのは孤立のみだと感じています」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210222/k10012880321000.html
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