• No.2 黒田官兵衛

    20/08/03 07:41:14

    ■親が何も知らずに子どもに処方される向精神薬

    しかも、その先の治療は、当事者の自己決定権を尊重する患者ファーストとは程遠いのが現実だ。法的にも精神科医が絶対的な権限を与えられている日本の精神医療において、医師と患者の関係はフラットなものではない。

    「私が心底恐ろしいと感じるのは、親が何も知らずにわずか2歳、3歳の幼児に向精神薬を飲ませていることです。この『何も知らず』というのがポイントです。実際のケースとしては、3歳児健診で発達障害の可能性を指摘され、専門医に繋がった子が、初診でADHDと診断され、いきなりストラテラを処方されたことがあります。その際、 親は薬について何の説明も受けることなく、ただ飲ませるようにと指示されただけでした」

    ストラテラの医薬品添付文書の、効能又は効果に関連する使用上の注意の項目には、「6歳未満の患者における有効性及び安全性は確立していない」と明記されている。つまり、この専門医は、安全性が確かめられていない年齢の幼児に処方しながら、保護者に副作用などのリスクを説明することもなかったというわけだ。

    ちなみに、厚労省の保険診療情報データベースを見ると、0〜4歳の幼児に処方された向精神薬の実態が載っている。患者の正確な人数までは読み取れないが、2017年4月から2018年3月にかけて、ストラテラ(10mg)は3,485カプセル、ストラテラ内用液(0.4%)は、123,406mlが処方されている。

    「そもそも経過観察もせずに初診でADHDと診断することに問題があります。そして、薬物治療以外の方法を試すわけでも提案するわけでもなく、いきなり薬を出すという姿勢も問題です。しかし、親はこれがおかしいことだとは夢にも思わないでしょう。なぜなら、行政機関とそこから繋がった専門家の指示に従っていただけだからです。不適切投薬は取り返しのつかない被害を引き起こします。つい最近も、本来統合失調症にしか適応のないゼプリオン注射を打たれた自閉症スペクトラム障害の10代男性が死亡した事例が国に報告されています。」

    ■定義の拡張により増える顧客

    しかも、こうした過剰診断と不適切投薬は、子どもだけの問題ではなくなりつつある。いい年をした芸能人や著名人が、「実は私も発達障害だったんです」とカミングアウトするケースは昨今しばしば見られる光景だし、SNSを見れば、大人の発達障害を自称するアカウントがあふれている。

    「専門家たちに言わせると、大人になってから発症したのではなく、生来より発達障害を抱えながらそれに気付かず生きてきた人が、大人になって顕在化したのだそうです。こうして発達障害という概念を子どもだけでなく、大人の発達障害、やがてはシニアの発達障害といったように拡張しているわけです」

    精神医療業界が定義を拡張するときには、要注意だ。科学における定義には境界線が必要だが、精神医療業界の場合は、境界線の範囲を広げると同時に、境界線自体をあいまいにさせるからだ。

    「実際、特定の専門家たちは、健常者と発達障害者の間に境界線はなく、誰もが発達障害の要素を持っていると主張しています。誰もが特性を抱えていることや線引きができないという考え自体には私も同意しますが、それを個人の特性ベースではなく医療に関わる障害ベースで考えることについては大反対です。なぜならば、それは間違いなく過剰診断を引き起こすことになり、際限のない拡大解釈を許すことになるからです」

    精神医療業界にとって、定義を広げることは顧客を増やすことを意味する。本来治療の対象者ではなかった軽症者にまで境界線を広げ、さらに境界線自体をあいまいにすれば、顧客は激増していく。

    折しもコロナ禍により医療資源が逼迫しているとされるなか、精神医療業界の知恵は、真に支援が必要な人に手を差し伸べるために使われるべきだろう。

    取材・文/野中ツトム(清談社)
    https://nikkan-spa.jp/plus/1684638

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