京都の主要ホテル、宿泊者数99.9%減が映す未来 ズタボロの観光業

匿名

落武者

20/07/23 09:18:40

京都の主要ホテル、宿泊者数99.9%減が映す未来
ズタボロの観光業、議論すべきは地域経済の「国有化」

2020.7.20(月)

(略)

 不評際立つ「Go To トラベル」事案ですが、ここにきて、2020年3月以降、いかにコロナウイルス騒ぎが日本の観光業に壊滅的な打撃を与えてきたかということが分かるデータが次々と公開されて肝を冷やします。

 例えば、京都市の観光協会が発表している月例データでは、目を覆うような惨状が報告されています。

[画像]京都市観光協会データ月報(2020年5月)。アゴが外れるような数値が並んでいる


 インバウンドとしてあれだけ騒がれ、また一時期は「観光公害」であるとして京都観光に訪れる外国人観光客そのものを制限しようとまで言われていたのに、市内55ホテルの外国人延べ宿泊客数はコロナのお陰で前年同月比、なんとマイナス99.9%。「99.9%になった」のではなく「99.9%減少した」のですから、文字通り昨年に比べて1000分の1しか観光客が来なかった、ということを意味します。これはいったいどういうことなのかと思うぐらいにヤバいことになっています。

 日本観光の中心地である京都ですらこの惨状だということを踏まえたうえで、以下の観光庁が発表した我が国の主要旅行業者の旅行取扱状況速報(2020年5月度)を重ねてみましょう。

[画像]主要旅行業者の旅行取扱状況速報。こちらも惨憺たる数字が並んでいる

 緊急事態宣言が発布され、自粛期間中だったということも踏まえたとしても、この数字はさすがにヤバいわけですけれども、サマリーのところだけでもみてみましょう。

新型コロナウイルスの感染拡大による旅行の延期や中止の影響等により、総取扱額は海外旅行、外国人旅行、国内旅行各部門で前年同月と比べ大幅に減少した。

【海外旅行】 総取扱額は対前年同月比 1.0%となった。

【外国人旅行】 総取扱額は対前年同月比 0.2%となった。

【国内旅行】 総取扱額は対前年同月比 3.4%となった。

 ということで、こちらも海外旅行は「昨年比1%減ではなく、1%になった」、国内旅行は「昨年比で3.4%になった」ということになり、どう考えても壊滅的な打撃が日本の観光業界を襲っていることになります。(略)

日本は国を挙げて海外からの観光客を日本に呼び込み、日本の魅力を伝え、外国人観光客が日本の観光業を支える「観光立国」を目指してきました。(略)

15年の歳月を経て、日本は世界でもまずまず旅行者を惹きつけられる観光国として成功を収めたのです。中でも、経済成長の著しい中国からの旅行者は、2018年から19年で14.5%増の959万4300人と急増、沈む地方経済の地域収支を担いました。(略)

地方によっては、地域の外からお金を稼ぐことのできる産業は観光業だけで、残りは町役場や警察官などの公務員か、年金生活者のような「国から無償で降ってくるお金」で生活している人たちばかり。(略)観光がなければ、地元の経済の崩壊すらあり得る地域も少なくありません。

(略)

 そこに、コロナ騒動が直撃しました。(略)観光地としての投資を続け、オリンピック後も訪日観光客がどんどんやって来る前提でホテル建設に邁進してきた観光業界にとって、コロナ騒動はその投資が一気に無に帰すような衝撃でした。

 現在、国内は自粛、海外からの観光客は実質的に完全にストップしています。これまでの投資が無駄になるどころか、売り上げが2020年2月から5月にかけて完全に途絶えるという事態になると、いくら雇用調整助成金や持続化給付金が国からばらまかれようと、そのような金額では到底足りず、破綻必至です。(略)

 今回の「Go To トラベル」は、こういった観光業全体の苦境に対する国のギリギリのサポートと好意的に評価される一方で、金額が小さすぎて焼け石に水だという側面もあります。意外と知られていませんが、観光業の規模は実際にとてつもなく大きいからです。

・2018年 旅行・観光関連市場(消費) 約25.5兆円

・2019年 飲食サービス市場(消費) 約27兆円(日本フードサービス協会)

 (略)およそ年50兆円以上の観光市場が日本にはある、という前提で考えて良いのではないかと思います。

 そうだとすれば、月およそ5兆円内外の市場であった観光事業が2020年2月以降は「ほぼゼロ」にごっそり消えたことになります。恐らく、皆さんの想像以上に、観光業界の市場は大きいのではないかと思うんですよね。

続く

コメント

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  • No.10 関連トピック

    20/07/23 09:37:19

    【日本経済】新型コロナの影響で宿泊業・旅行業の倒産が増加
    http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=3643957

  • No.1 落武者

    20/07/23 09:19:44

    続き

     そこに今回の「Go To トラベル」など政府系事業が単発1兆7000億円の助成金を観光業に投下します(略)

     そして、そこには「観光業が地域唯一のまともな民間事業である」という地方経済の現実がぶら下がっています。仮に、MMT(現代貨幣理論)による積極財政だと叫び、国債を新たに30兆円積み上げて日本銀行に引き取らせ、全額を観光業界に突っ込んだとしても、コロナウイルス対策が収束しない限りは半年ちょっとしかもちません。

     日本経済全体の経済規模は年間約550兆円と言われています。(略)つまり、日本経済というのはそれだけ民間経済の規模が大きいということです。その民間経済がコロナショックによって四半期マイナス10%成長に陥るだけで、ふた桁兆円が消えてしまうことになるのです。

     多くの方が政府の能力や財源の余力を過剰に見積もりすぎており、まるでたくさん国債を出しさえすれば積極財政で経済が回復するという宗教にハマってしまっているかのように見えます。

    ■JR北やANA、JALに迫る国有化危機

     しかしながら、観光業のバブル崩壊と一蓮托生になる地方経済は状況がまた変わってきます。観光業が破滅的に低迷することで崩壊の危機に瀕する自治体が続出する危険性がありますし、ホテルや旅館のような観光業のみならず、観光客の移動を担うバス会社やタクシー会社など地元の足を支えてきた交通業も次々と破綻しかねません。

     そればかりか、JR北海道のような地元経済の根幹となるような公共交通機関や航空会社も何もしなければ破綻しかねません。

     JR北海道は政府が何も対応策を考えなければ、2020年度を超えられるかどうかすら微妙な情勢に追い込まれるでしょう。2021年度に入っても、なおコロナウイルスの猛威が収まらず経済低迷が続くようであれば、日本航空と全日空すらもどうなるか分かりません。そして、こういった事態の収拾において、我が国がすべての産業を等しく支える財政出動など、どれだけ国債を新発しても無理であるということは考えておかなければなりません。

     さらに悪いシナリオは、地方経済の崩壊とともに破綻企業が続出した結果、地場の地方金融に融資の焦げ付きが連発して、信用保証協会付きではない一般的な貸し出しの不良債権化によって地場の金融機関の破綻が連鎖することです。これを食い止めるには、地域の金融機関を合併させて束ね、受け皿銀行をつくり、そこに公的資金を注入してどうにかする、という以上の解決策は見当たらないのが実情です。


     それでも何とか地方経済の崩壊を食い止め、地元の人たちが仕事を求めて都市部に移動するというような事態を避けるためにはどうすればいいのでしょうか。

     その第一は、雇用の確保による生活の安定のために、公共性の高い企業については5年や10年などの期限を切って思い切った国有化・公社化を進める令和版ニューディール政策を実施することです。地方で大量に発生する失業者とそれに伴う人口移動、地方のさらなる過疎化を計画的に、制御可能な形で進めていくしかないのではないかと思います。(略)

     MMT政策でさらなるばらまきをしたところで、仕事を失った人たちが生きていくには金額的に不十分ですし、再就職できるまでの間に何回ばらまけるのか、という問題は残ります。

     つまるところ、地元の雇用をつくり、当面は不採算でも生活の糧を得る中で生産性を高め、地方自治体の再々編を進めながら、過疎地での居住を制限するなどして、電気やガス、水道、ネット、道路などのライフラインや公共インフラを削減していかざるを得ないでしょう。(略)

    期限をしっかりと切った国有化・公社化の推進と地域金融機関の再編、また地方自治体の再々編のような抜本的な対策を打つ必要があると思います。(略)

     日本が自らの手によって日本全体を上手く救うために必要な議論とは、限りある財源・税収を合理的に使って国民の生活を守り、若い人たちに希望を持たせて出生率を確保しつつ、兵站計画を立てて「再起可能な縮小」をいかにして図るかということだと思います。あだ花のように見える「Go To トラベル」が描き出した問題を正しく受け止め、急激に高齢化の進む人口減少先進国として誇れる政策を描き出す必要があるのではないでしょうか。

    [写真]外国人旅行客で賑わった京都・東山も今は昔(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

    ジャパンビジネスプレス
    https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61376

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