• No.1 安元

    20/03/30 15:41:21

    ┃学校休校に伴う保護者支援
    ┃賃金補償は機能するか

     一足先に、小学校の臨時休校で仕事を休んだ保護者の賃金を補償する助成金の受け付けが始まった。

     雇用形態(正規・非正規)や企業の規模にはよらず、日額8330円を上限に休職中の従業員が賃金の全額を受け取れるよう企業に助成金を支給する。

     雇用関係のないフリーランスの人にも1日当たり4100円の定額を支援するというものだ。

     生活支援ということでは必要な措置だが、それでも問題がないわけではない。

     企業に勤める就業者の場合、助成金の申し込みをするのは企業となる。ただし、通常とは別の有給休暇を従業員に取得させなければならない上、上限8330円を超える分は企業の負担になる。このため、企業があえて申請しないという懸念がある。

     他方、フリーランスなどの人たちは発注者からの業務の内容や報酬が確認できる書面をもって自ら申請することになる。

     本来、支援を必要とする者を的確に支援するには、当該者に対して直接的に支援をすることが望ましい。例えばコロナの感染拡大以降、一定割合(雇用調整助成金では前年同期比10%)収入が落ち込んだ個人に対して(自己都合の退職等ではないなど)一定の事由を確認した上で助成する仕組みだ。

     しかし、こうした助成は難しい。所得をリアルタイムに捕捉できないからだ。

     実際、児童手当や各種保険料の減免など自治体が活用する所得情報は前年の所得だ。今回の緊急経済対策作りで一律の現金給付が主張されるのは、全ての家計の所得が迅速に捕捉できないからだろう。

     なお米国では給与税(日本の社会保険料に相当)の減税が取り沙汰されているが、所得課税の定率の減税は高所得層の方に有利になりかねない。そもそも税を納めていない家計には恩恵が及ばないという問題がある。

    (略)

    ┃需要の回復支援も重点的に
    ┃重要なのは「賢い支出」

     ただし需要の回復は全ての業種で一様ではない。家計や企業が委縮して自律的に需要が戻らない業種があれば、重点的な対策が講じる。

     海外観光客らが激減し消費減少が著しかった観光(特に地方の観光)などへのテコ入れが必要かもしれない。

     例えば、キャッシュレス決済のポイント還元を(終了予定の)2020年6月から延長するのに加えて、交通や宿泊関連の還元率を引き上げる。

     また、9月から始まる「マイナポイント事業」でも観光関連の消費に係るポイントについて還元率(現行25%)や上限(同5000円)を引き上げる。そうすればマイナンバーカードの普及にもかなうだろう。

     日本が抱える危機は新型コロナ問題にとどまらない。感染拡大という「今そこにある危機」に対処しつつ、社会の高齢化に伴う年金、医療、介護などの社会保障費の増加という「これからの危機(=財政の構造問題)」にも向き合わなければならないからだ。

     緊急経済対策は必要だとしても、財政出動を野放図に続けられるわけにはいかない。

     報道では、緊急経済対策は現金給付も含めて30兆円超の規模が検討され、30兆円の財源は赤字国債で賄うという。

     家計や企業は「カネ余り」状態にあり、国債の消化は容易という楽観論もあるかもしれない。しかし、感染拡大が広がり長引くほど、生活資金などのため家計や企業も資金が必要になる。資金の需給がひっ迫して金利が上昇する可能性も否めない。

     また仮に消費税を減税しても、構造的な赤字が拡大すれば、将来の増税や社会保障の持続性への不安が残り、期待したような消費増にはつながらないだろう。

     当面の危機対応と財政健全化を両立させるためにも「30兆円」など、財政出動の規模だけにこだわるのでなく、危機のフェーズに応じた経済効果を最大限発揮する賢さ(=ワイズスペンディング)が重要だ。

    【論考の詳細は、東京財団の経済政策についての共同宣言(2020年3月)を参照していただきたい】

    (一橋大学教授 佐藤主光)

    ダイヤモンド・オンライン
    https://diamond.jp/articles/-/233116

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