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「将来に希望はない」、香港の若者が直面する3大経済問題
2019年09月30日
香港の若者は就職難や低賃金、不動産価格の急騰など、様々な問題に直面している。こうした将来への不安が、香港の政治危機に拍車をかけているのだろうか。
「私は、より良い生活を得るために大学に進学したのに、自分の将来には希望がありません」と、ディッキー・チュンさんは話してくれた。
ディッキーさんと友人たちは皆、学生だ。しかし、彼らの友情や屈託のない笑顔の裏には、将来への不安が潜んでいる。
私は学生たちと香港の旺角(モンコック)地区で会った。夕食を食べながら、不満やむなしさについて話してくれた。
ディッキーさんは教師を目指して勉強している。家族のために大黒柱になりたいというが、それは不可能だと考えているという。
大学を卒業しても、良い仕事に就くことはなさそうだと、もしかしたら就職そのものが無理かもしれないと、ディッキーさんは言う。
「私は家族の生活を変えたい。香港では、家族は高い家賃を払うため、すごく働かなくてはなりません」。そう話すディッキーさんの目から、感情があふれ出していた。
「でも自分が大人になっても、それは無理です。求人率は下がっているし、私たちが3年後に卒業する頃には、状況はもっと悪化しているでしょう」
リョン・シュ・ラムさん(18)が描く将来も、ディッキーさんとほとんど同じだ。
「卒業しても、家族と暮らすことになると思います。マンションで1人暮らしをするのは大変で(中略)自分で買うのは現実的な選択肢ではないので」
「それに香港の住宅は、非常に狭い造りになっています。小さいマンションの購入に大金を使って、それで自分の人生の可能性を狭めてしまうのでしょう」
ディッキーさんやリョンさんのような若者は、3つの大きな経済問題に直面している。賃金は増えない。就職はますます競争が激しくなっている。そして、不動産価格は急騰している。
香港で政治抗議が続く理由は複雑で、住宅購入や就職の問題は直接関係していない。それでも多くの若者は、何十年も続く香港政府の無計画な行政で、自分たちは無視されていると感じている。
若者たちは、社会の仕組みが自分たちを阻害していると感じている。それだけに、社会への怒りに拍車がかかった。
■緩やかな賃金上昇
香港の一流大学に入るための競争はすさまじく激しい。しかし、たとえ一流大学に合格して卒業したとしても、良い仕事や安定収入が保証されているわけではない。
それに加えて香港の学生は、就職機会を中国の学生とも争うようになっている。
香港理工大学講師のチャン・ワイ・クンさんは、1990年代の大学卒の初任給は約2万5000香港ドルだったが、今日では2万8000香港ドル(約39万円)程度に過ぎないのではないかと指摘する。
ワイ・クンさんは、過去30年間の香港の若者の賃金上昇と生活費に関する報告書を公表した。
ワイ・クンさんは、初任給の金額が停滞する一方で、不動産価格は十倍に膨れ上がっていたことを発見した。
「私たちの教育プログラムは時代遅れだ。私たちの経済は、不動産市場で富を築いたごく一部の財閥が独占している。こうした一族は、ハイテク産業や革新的なアイディアへの投資を惜しむ傾向がある。香港政府は、ハイテク開発に口先では賛同しているが、何も実行していない。若者がこの新たな産業に参加したいと思っても、良い機会があまりない」
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