• No.17177 輪投げ

    16/08/14 19:09:01

    >>17176 続き

    3~4回目に会った時、生い立ちや少年時代のことを尋ねた須藤教授に対し、Aは
    「関係ないでしょ」と言い捨てたという。
    「私が公判で証言したように、実は、Aは中学時代にいじめを受けており、その葛藤の中で事件を起こしたわけです。
    彼はその部分は触れられたくないのでしょう。
    話していくうちに中学時代に他校のヤンキーに捩じ込まれ、どちらかと言うとやられちゃうタイプだったと、『追い込みかけられていたんだ』と言うのです。
    それは彼にとって屈辱的な体験だった。
    でも、そのことと今回の事件は彼の中では別々のことという考えでした。
    私は彼に『中学時代のトラウマ的な体験と今回の事件の関連性はあると思うし、そういうふうに裁判では説明するよ』と言いました。
    Aはそれ以上否定しなかった。
    だから、どこかで分かっているのかもしれない。
    親のことも同様に自分から積極的には言わなかったですね」

     証人として公判に出廷した父は、Aに対する幼少期時代からの体罰を明らかにしている。
    「門限を破るなどした時は平手打ちで数回。
    顔を避けようとした時には顔に蹴りを入れるなどしていたのです。
    Aの母はそれを止めることもありましたが、父のエキセントリックな性格ゆえにハンガーで叩くこともあったと証言しています」(前出の全国紙社会部記者)

  • No.17178 輪投げ

    16/08/14 19:20:24

    >>17177 続き

    「家族関係や本人の発達その他を見ていくために家族の絵を描いてもらう家族画、自己像を探るバウムテスト、ある書き出しの言葉に続けて文章を作る文章完成法テストといった心理テストを実施しました。
    その中で、父の証言にあったような暴力を振るわれた一方で家族に対する良い思い出も持っていることがうかがわれたのです。
    さらには,これらテストへの取り組みの熱心さから,指示を理解すれば一生懸命に臨む彼の長所も見て取れました。
    面会を重ねていくにつれ、徐々にAの言動に変化が見られることがありました。
    通常の面会は一時間。
    でも、今回は関係者の取り計らいにより、二時間まで面会できることになっていました。
    最初のうちは『おはよう』と言っても
    『うん……』みたいな感じだった。
    大人からすれば可愛げのない子供ですよ。
    ある日、Aと話している中で二時間近くなったので『今日はこれくらいにしよう』と言ったところ、Aは『もういいの? 他に聞きたいことがあれば聞いて。
    まだ少し時間あるよ』と言うわけです。
    意外でしたね。
    鑑定が後半にいくにつれ、私との関係も変化してきました。
    例えば『自分みたいなのを担当して大変じゃないの?』と言われたこともあります。
    『マスコミに追いかけられてるんじゃないの』と。
    『私のことを心配してくれてるの?』と聞くと、彼は『いや……』と言って、いつもの素っ気ない感じに戻るんですけど、私のことを気遣う発言が見られるようになるなど、微妙な変化が生まれてきました」

     須藤教授は、面会を通じて、実行犯とされる3人の関係性についても解き明かそうとする。
    その過程で事件の背景が少しずつ浮き彫りになってきた。

    上村遼太君

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