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東日本大震災は発生から4日で1000日目となる。おびただしい命が奪われた一方で、あの日に生を受けた命もある。悲しみに覆われた地域で芽生えた小さな命は、将来への希望にも映る。誕生から1000日となる2歳8カ月の子どもと家族の姿を追った。
◎亡き曽祖父と重なる面影
宮城県石巻市の仮設住宅に暮らす会社員永沼博之さん(30)、千尋さん(30)夫婦の次男珠音(しおん)ちゃん(2)は2011年3月11日午後3時18分、余震が続く中、市内の医院で産まれた。
千尋さんは分娩(ぶんべん)台からすぐに下ろされ、看護師2人に抱えられて3階から屋上に向かう階段の踊り場に上がった。しばらくすると津波が1階まで押し寄せた。「体はふらふらで寒かった。何より珠音が無事でよかった」と千尋さんは振り返る。
同じころ、珠音ちゃんの曽祖父津田司郎さん=当時(79)=が津波に巻き込まれたとみられる。
11年5月下旬、珠音ちゃんが産まれた医院に近い場所で遺体で見つかった。経営する海運会社も近く、いずれかに向かっていた可能性がある。
「最期の姿が分からないのが心残りでね。父は珠音の誕生をとても楽しみにしていた」。珠音ちゃんの祖母で津田さんの長女鶴岡弘美さん(52)は言葉を詰まらす。
同じ日に、誕生した命と、帰らぬ旅に出た命。家族は思いを重ねる。
「おじいちゃんは誰にでも優しく、たくましい人だった。いいところを珠音が受け継いでくれたら」と千尋さん。
食べ物の好みや顔も似てきたという。「2人とも赤飯が好き。ますますそっくり」と鶴岡さんは目を細める。
珠音ちゃんはすくすく育つ。人気グループ「EXILE(エグザイル)」の楽曲に合わせて体を動かす。兄の小学2年蓮翔(れんと)君(7)をまねてブロックや折り紙遊びがお気に入り。
「希望を持って、思い通りの人生を歩んでほしい」。千尋さんはそう願っている。
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