ランドセルくらいは背負わせてあげたかった…5歳男児を失った父の想い

  • なんでも
  • 島津義弘
  • 20/12/01 12:26:29

昨年4月の「池袋暴走死傷事故」で、通行人の松永真菜さん(当時31)、莉子ちゃん(同3)母子を死亡させた旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の第2回公判が3日、東京地裁で行われる。この事故は日本中に大きな波紋を呼んだが、暴走事故は後を絶たず、今年の東京都内の交通事故死者数はすでに昨年と同じ133人となった。9月には台東区で保育園児(当時5)が少年(19)の運転する乗用車にはねられ命を落とした。息子を亡くした父の井上祐輔さん(38)がスポーツ報知の取材に応じ、悲惨な事故が二度と起こらないようにと思いを語った。(瀬戸 花音)

 「帰ってきたら家族みんなで半沢直樹を見ようね」。井上さんは9月27日朝、そう子どもたちに約束をして友人と会うため、家を出た。

 事故が起きたのは午後6時過ぎ。台東区浅草橋で青信号の横断歩道を渡り始めた長男が、信号無視の乗用車にはねられた。車を運転していた少年は自動車運転死傷行為処罰法違反の容疑で現行犯逮捕。長男は意識不明の重体で病院に運ばれた。

 井上さんの携帯が鳴ったのは友人と会った帰り道。「弟が車にはねられた! パパ! 私、どうすればいいの?」。電話の向こうの長女は泣いていた。「もってあと1時間の命です」。病院に到着した井上さんに医者はそう告げた。「1時間の命って…。どういうことだよ…」。それでも長男は84時間を懸命に生き、10月1日の早朝、息を引き取った。死因は外傷性くも膜下出血だった。

 わんぱくで、優しくて、思いやりのある子だった。「最近すごく男の子になってきてね」。ある日、井上さんが瑛人の「香水」を歌っていると、「パパ、なにそれ?」と長男が聞いてきた。「女の子に一番モテる歌だよ」と答えると、「ぼくも歌いたい!」と言い、一緒に練習した。「5年間、あっという間でした。せめてランドセルくらいは背負わせてあげたかった」

 車を運転していたのは19歳の少年だった。「まだ若い青年で…。相手を憎みたくはなかったです」。だが、少年法により警察は名前を発表しない。「少年法に守られているが故に憎しみが生まれてしまう」

 現場は交番前で、防犯カメラに映像は残っていた。親子2人、買い物の帰り道。両手に荷物を持った妻より先に横断歩道を渡り出した長男は、妻の目の前ではねられた。「映像は捜査の都合上見せてもらえない。でも僕は見たい。これから先、ずっと家内だけがそのつらさを抱えていくのは、あまりにもつらいです」

 事故の当初は自分が一番不幸だと思っていた。しかし、交通事故に関するニュースは後を絶たない。「毎日どっかでこうやって悲しんでる人がいるんだなって。松永さんの事故もそうだし、遺族はなんで、どうしてってみんなが思ってると思います」。同じような交通事故が二度と起こらないことを願い、ツイッターなどで発信を続けていくつもりだ。

 今後は家庭裁判所の審判で処分が下される予定だが、刑罰を科すことが適当だとみなされれば、検察官送致により、成人同様の裁判が行われる。井上さんは裁判を強く願う。「僕らにやれることは、それしかもう残っていないから」

◆「刑事事件になる可能性は50%」…少年法の専門家

 少年法の専門家によると、少年事件では、非行事実と要保護性が、審判の対象となる。今回の事件では、自動車運転過失致死傷が非行事実で、要保護性(再犯の可能性があり、保護処分により再犯を防止できるとされること)は「夫婦関係、親子関係を始め、友人関係がどうだったのか。仕事にさぼらずに行っているか等」について調査する。「一般論として、今回の事故が初犯で真摯(しんし)な対応が見られ、要保護性に問題がなければ、刑事事件になる可能性は50%ほど」という。

 検察官送致決定となれば、検察官が成人の刑事事件と同様に起訴・不起訴を決め、起訴されれば裁判となる。「遺族は審判への参加によって、意見表明を願い出ること、刑事事件となった場合は、訴訟参加によって思いを伝えることが大切だ」という。

2020年12月1日 8時0分 スポーツ報知

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