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だが、脳裏に焼き付いているのは十一歳のかわいい次男のまま。
生きていればどんな表情をし、どんな家庭を築いているだろうか-。史代さんは「大人になった姿を見てみたいです」とつぶやく。
御巣鷹の尾根には例年、春と八月十二日、秋の計三回登ってきた。
約五年前に政則さんが脳梗塞を患ってからは年二回に。今年はこの日だけだ。
夫妻はつえを持ち、手すりを頼って少しずつ尾根を歩いた。
墓標の前にやって来ると、柱の赤いパーカを新しいものに替え、手を合わせてじっと目を閉じる。
「心の中で『来たよ』と話しました」と政則さん。こう語り掛けると、帰る時は息子が一緒にいる気がする。
だから、回数が減っても慰霊登山をやめるつもりはない。体が続く限り、そばに行きたい。- 5
17/08/13 13:24:33