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- 匿名
- 14/08/16 15:45:03
経済連携協定(EPA)に基づいて来日しているイスラム教のインドネシア人の介護福祉士と看護師の候補者が、研修先の福祉施設や病院で宗教上の壁にぶつかっている。利用者が戸惑うことを理由に髪を隠すスカーフを取るよう求められたり、お祈りの時間を十分に取れなかったりするケースが続出。候補者と施設を仲介する機関も有効な手だてを打てず、毎年のように同じ問題が繰り返されている。
今年二月まで横浜市の老人ホームで研修を受けていた二十代のインドネシア人女性は「ジル
バブ」と呼ばれるスカーフを仕事中は外すよう求められた。イスラムの女性は、家族以外の男性の前では髪を隠すのが一般的。抵抗はあったが「利用者が怖がる」「衛生的でない」と言われ、やむを得ず外していた。
「どの施設も同じと思っていたし、従うしかなかった」。しかし別の施設で研修する友人に聞くと、着用が認められているという。精神的に追い詰められ、ある日、無断でジルバブ着用のまま出勤。すぐに職場の上司に見つかり、女性によると、その場で自宅待機を命じられた。
結局、女性は施設に復帰することができず、着用が認められている西日本の施設に特例措置で移った。「ジルバブをしないで人前に出るのは、日本人が下着姿で外出するようなもの」と女性。「本当に恥ずかしかった」と振り返る。
現在、日本がEPAを結ぶのはほかにフィリピンとベトナム。昨年度までに候補者約千九百人を受け入れたが、文化や職業意識の違いから施設とのトラブルが後を絶たない。イスラム教徒の多いインドネシアは宗教上の問題が目立っているという。
EPA候補者の支援を続ける日本語講師の平井辰也さん(50)=名古屋市=は「問題はジルバブだけではない」と指摘。本来は細かく時間が決まっているお祈りも、短い休憩で慌ただしく終えなければならない。食べられるものも限られ、「ストレスで帰国する人もいる」という。
戸惑いは施設側にも広がる。女性が働いていた横浜市の施設の担当者は「夏にジルバブをかぶったまま仕事をすれば脱水を起こす恐れもあるし、イスラム教徒に慣れていない利用者が不安に思うかもしれない。女性にも了解してもらっているはずだ」と着用を認めない理由を説明。「お祈りのために彼女たちだけに時間を取るのも不公平だ」と訴える。
候補者の日本での受け入れ先は、厚生労働省の外郭団体の国際厚生事業団
(東京都)が仲介している。だが「宗教的な配慮に積極的な施設も多く、適切な仲介をすればトラブルは減るはずなのに、ミスマッチは一向になくならない」のが現状だ。事業団は「差別につながる恐れがあるため、マッチングの際に宗教は問えない」と説明するが、平井さんは「国が責任を持って対応すべきだ」
と求めている。
<経済連携協定(EPA)> 貿易や就労などの自由化により、国家間で物や人の移動を活発化させる狙いの国際協定。日本は労働力の輸出を目指す相手国の要望を受け、2008年度からインドネシア、09年度からフィリピン、14年度からベトナムの介護福祉士と看護師の候補者をそれぞれ受け入れている。
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