- なんでも
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エリナちゃんは、小さい頃から、お母さんに絵本を読んでもらうのが大好きだった。
毎日、お母さんのひざに、ちょこんと座って、家庭劇場の、はじまり、はじまり。
「むかしむかし…」。お母さんの優しい声がする。
いつもの「早く」「早くしなさい」の声とは違う声。優しい声。
テレビと違って、わたしのためだけに話してくれている声。聞きながら、きれいな絵が動く。アニメじゃなくても、お話を聞きながらだと、絵は生き生きと動くのだ。
動くにつれて、小さなアパートの部屋が宮殿になったり、大草原になったりする。そして、お母さんの甘い匂い。柔らかな腕。
「絵本を読んでもらうのは、なんて、うれしい事だろう!わたしの耳も目も鼻も、全身が幸せ!」
エリナちゃんのお母さんは、読み終わるといつも「面白かった?」とは聞かない。
「面白かったねぇ!」と言って、本当にうれしそうに笑う。
エリナちゃんは、お母さんが読むのを楽しんでいることがうれしい。
お母さんと同じものに感動して、気持ちが一つになることがうれしい。
そんな幸せを与えてくれる「本」という奇跡が大好きだ。- 0
09/10/14 10:56:47