- ニュース全般
- スイートアリッサム(価値あるもの)
- 22/08/02 12:47:57
先のとがった尾剣や鉄兜のような甲羅、脚に付いた鋭いはさみ。そんな姿をあまり変えることなく、カブトガニ類は約4億5000万年もの間、海の底をはい回ってきた。恐竜たちの命を奪った小惑星の衝突では首尾よく生き延びたが、人間の所業をかわすのは難しいかもしれない。
ほかの海洋生物と同様、カブトガニ類も乱獲されたり、産卵場所を破壊されたりしてきた。さらに、その青い血液にはワクチンを作るのに欠かせない希少な凝固剤が含まれることから、大量に捕獲されてもいる。人間のために血を抜かれた個体が命を落とすことも多い。
4種いるカブトガニ類のうち、日本で一般にカブトガニと呼ばれている種は、過去60年間で個体数が半分以下になった。だが、フィリピンの小さなパンガタラン島では、予期せぬ回復力の象徴になっている。この島では長年、森林やサンゴ礁といった自然環境が破壊されてきて、カブトガニよりも大きな動物がほとんど姿を消した。
しかし、2017年に島が海洋保護区になると、生き物たちが再び増えてきた。サンゴ礁の修復や植樹活動が功を奏し、全長2.5メートルほどにもなるハタ科のタマカイを含め、多くの動物が戻ってきているのだ。
カブトガニにはゾウやパンダほどのカリスマ性はないかもしれないが、太古から生きるこの無脊椎動物を目にすれば、野生生物を大事にしようと思うだろう。新型コロナウイルス感染症向けのワクチン開発で、カブトガニは重要な役割を果たした。そのことへの感謝の思いが、生息地の保全強化やカブトガニの血液に代わる合成物質の使用促進につながっていくことを、保護活動家たちは望んでいる。そうなれば、人類を救うのに協力してくれたカブトガニを、今度は私たちが助けられるはずだ。
※ナショナル ジオグラフィック日本版8月号特集「カブトガニ 大きな甲羅で時代を超える」より抜粋。
https://news.yahoo.co.jp/articles/a8187b14a68d128bf41f49a82dac35c2905d5c23
- 0 いいね