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- 参宮線
- 21/12/27 20:58:38
脳死した男児(当時1歳)の肺移植手術の際、クーラーボックスから取り出された肺が強調して映し出され、精神的苦痛を受けたとして、広島県内の両親がTBSテレビなどに計1500万円の損害賠償を求めた訴訟を巡り、母親が取材に応じた。1審・地裁判決で請求は棄却されたが、高裁で控訴審を係争中。母親は「息子を亡くした悲しみに向き合えていない中、放送された怒りは収まらない。主張に耳を傾けてほしい」と訴えている。(岡田優香)
「不妊治療の末に生まれてくれた、待望の子でした」。母親は男児を授かった時、夫と喜び、ベビー服やおもちゃを買いそろえたという。
2016年2月に無事出産。直後、体力が落ちていたが、わが子をこの目で確かめたくて、息子が寝入る保育器に足を運んだ。「かわいい。やっと出会えたね」。男児は家族からかわいがられ健やかに育っていった。
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しかし、1歳2か月だった17年4月の深夜、男児の体調が急に悪くなり、心肺停止状態に。救急搬送され、手術で一命は取り留めたが、息子は自発呼吸が出来ず、腎臓機能も止まった。
医師からは「いつ亡くなるか分からない」と告げられた。介護福祉士の母親は、自身の持つ医療知識で、回復が難しいことを悟った。悲しみに押しつぶされそうになりながら帰宅したある日の夜、息子の夢を見た。
「脳は病気で侵されていても、体は元気だよ」。呼び掛けに応じない息子が、訴えてきたように感じた。体の一部でも誰かの元で生きてくれたら。息子をこの世に残したい思いが湧き起こり、臓器移植にわずかな希望を託した。
医師に臓器提供を申し出てから約1か月間、面会中は、息子に声をかけ続けた。「一人で寝るから寂しがらないように」と、消灯前、枕元でボイスレコーダーに収録した家族らの声を流してもらった。息子の死と向き合っていくつもりだった。
しかし、同年7月、番組で移植の様子が放映され、知らない間に息子の臓器が画面いっぱいにテレビで流された。執刀医は息子の肺をクーラーボックスから取り出すと、「軽くていい肺」などと発言。執刀医の手のひらに載せられた肺は、モザイク加工なしでメインに映し出された。目にすることがないはずの息子の臓器がこんな形で放送されるなんて――。どうしても許せなかった。
19年4月にTBSなどを提訴。今年7月の1審判決で、「番組には移植医療への理解を深める目的があり、ありのままを放送することに相応の社会的意義がある」として棄却され、控訴した。
11月17日に行われた控訴審で、遺族側は「社会的意義を考慮しても、ドナーの肺をモザイク加工なしで放送することは必要不可欠と言えない」と訴えた。
母親は臓器移植について「命を広げる可能性のある選択のひとつだ」と話す一方、放送に対するショックは癒えない。「まだ息子のお骨を墓に納められていない。裁判でTBS側に法的責任を認めてもらい、息子を安らかに眠らせてあげたい」と語気を強めた。
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一方、TBSは控訴審で「放送が、『臓器提供者の遺族への配慮』を欠き、受忍限度を超えた違法なものではない」と棄却を求めた。読売新聞の取材に対し、「引き続き、放送にあたって細心の配慮を行うよう徹底する」としている。
控訴審は即日結審し、判決は来年2月9日。
ソース:https://www.yomiuri.co.jp/national/20211227-OYT1T50071/
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