- なんでも
- 生ポッポ
- 21/01/15 16:41:02
「積雪は少なく、それなりに寒いけれども、厳寒というほどではない」という地域は、どのような状況だろうか。、福島県中通り地域のシングルマザー・Mさんに訊ねてみた。複数の持病を抱えているMさんは、障害を持つ20代の子どもとともに暮らしている。数日前、2日連続で最低気温が氷点下8℃近くなり、「さすがに、しんどかったです」ということだ。
Mさんが今、最も困っていることの1つは暖房費だ。住んでいるアパートには、入居前から2台のエアコンが設置されているのだが、1台は故障していて使えず、1台は効率の悪い場所に取り付けられている。6畳の1部屋に集中させて使っている暖房器具は、小さなセラミックファンヒーターとコタツだけだ。
「なかなか室温が上がらず、夜間は10℃まで上がればいい方です。電気代は、なるべく抑えるように心がけているのですが、12月は急に寒くなって1万円を超えました。1月は2万円を超えそうです」(Mさん)
生活保護費には、冬の暖房費などに対する補助(冬季加算)がある。福島県の2人世帯なら月額1万590円、日中も屋内で過ごす患者や障害者や高齢者の場合は1.3倍の割増を受けられる場合がある。しかしその割増があったとしても、月額1万4000円程度にとどまる。健康に支障のなさそうな生活環境を整えることは難しそうだ
Mさんの子どもは毎日シャワーを浴び、1日2食に減りがちではあるけれども食事もとっている。しかしMさん自身は、シャワーは週1回、食事は1日1食しか食べない日がある。節約するためだ。
「もう、削るものがありません」(Mさん)
節約を超えた節約、健康を害しない室温と飢えない食の二者択一を強いられる背景の1つは、住宅の性能である。
「築50年近い木造アパートで、壁が薄いんです。その上に窓が大きいので、冬は寒くて夏は暑いです。建物自体も傾いています。浴室はコンクリートとタイルで、ほぼ外と変わらない寒さです。シャワーに氷柱ができます」(Mさん)
生活保護の家賃補助で暮らせる物件を探すと、建物自体の性能・環境・利便性・設備・広さなどのうち、多くを犠牲にせざるを得ない。病気と障害を抱えたMさん親子は、周辺の環境を最優先した。生活環境の暑さ、寒さを受け入れた上での「究極の選択」なのだが、もしも生活保護で認められる家賃の上限が数千円高ければ、周辺の環境も屋内の環境も良好な物件を選ぶことができたかもしれない。
ともあれ、この冬のMさん親子の課題は、寒さで死なないための電気代だ。新型コロナ対策による出費が生活を圧迫しているところに、さらに寒冷が追い打ちをかけている。
重なる災害や災厄に対して、個人の「自助」や地域の「共助」で備えることは、まったく非現実的だろう。さらに大災害が2つ3つ重なると、国の「公助」でも力不足かもしれない。日本を襲う自然災害の背景は、地球温暖化に伴う気候の不安定化や、環太平洋火山帯で地殻運動が活発化していることなど、まさに「グローバル」な現象の数々であるからだ。
とはいえ国家の役割は、どのような非常事態においても国を守ること、すなわちその国にいる人々を守ることにある。現在は、まぎれもなく国レベルの「公助」、あるいは地球規模の「公助」の出番であろう。
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