- ニュース全般
- 森長可
- 20/09/22 12:56:58
新型コロナウイルス感染拡大の勢いが衰えないフィリピンで、遠隔授業の導入が貧困層を苦境に立たせている。授業に必要な機材や通信費を捻出する余裕がないためだ。13歳の少女がスマートフォン入手を試みて性被害に遭ったことが、時事通信の取材で判明。今年度の勉強を断念する児童・生徒は300万人余に上る。
マニラ首都圏に子ども3人と暮らす47歳のメアリー(仮名)はネイルアートやヘアカットで生計を立てる。以前から13歳の娘アンナ(同)たちにスマホをねだられていたが、家賃の支払いにも事欠く日々。「待ってね」を繰り返し、商売用のスマホを触らせていた。
感染が広がり続ける中、例年6月の始業式がいったん8月下旬に延期された。「ワクチンを入手するまで対面授業は認めない」とドゥテルテ大統領が明言。オンライン授業の導入も決まった。
アンナにとって、スマホは憧れの物から必需品に変わった。購入に3000ペソ(約6500円)必要だが、コロナ禍で母親の収入は激減。50ペソ(約110円)しか稼げない日もある。
「来てくれればスマホとお金をあげる」。7月のある日、フェイスブックで知り合った男(31)の誘いに乗ってしまった。その晩帰宅せず、翌日男といるところを警察に保護された。「帰さないと脅され、従うしかなかったの」。アンナはそれしか語らなかった。男は誘拐や性的暴行の罪に問われた。
メアリーの後悔と憤りは尽きない。娘が自分の知らない人間と外出したのは初めてで、「1人悩んでいることに全く気付かなかった」。早起きし、妹2人の面倒をよく見たアンナは今、引きこもりがちでいら立ちやすくなった。
支援団体「サリンラヒ児童問題連盟」は、スマホやパソコンを買うために自撮りポルノを売る子どももいると明かした上で、「遠隔授業の導入が子どもたちを被害に押しやった」と指摘。「コロナ禍で職を失って苦境にある貧困層を、オンライン授業がさらに追い詰めている」と批判した。
フィリピンでは、新年度の授業を受ける全ての児童・生徒に「登録」を義務付けている。家庭や教育現場の混乱を受け、政府は始業を来月5日に再延期したが、21日時点の登録者数は昨年より約320万人少ない。コロナ禍で今年度の勉強を諦める子どもの数だといい、全体の12%に上る。
時事通信社 09/22 07:06
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