NECや富士通が頑張れなければ米中5G戦争に勝利するのは中国だ 英国もファーウェイ排除に転換

匿名

真田幸隆

20/07/16 15:06:55

木村正人 | 在英国際ジャーナリスト
7/15(水) 11:35

■独仏の判断にも影響

[ロンドン発]中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の次世代通信規格5G参入問題で、オリバー・ダウデン英デジタル・文化・メディア・スポーツ相は14日、下院で1月の限定容認方針から全面排除に転換したことを表明しました。

ダウデン氏は「5月、米商務省はファーウェイに新たな制裁を加えた。サプライチェーンに不確実性が生じ、5G機器のセキュリティーを保証できなくなった」と説明。イギリスの方針転換はドイツやフランスなど欧州連合(EU)加盟国の判断に影響を与える可能性があります。

これに対して中国の劉暁明・駐英大使は同日、「ファーウェイに対する英政府の決定は残念で間違っている。イギリスが外国企業に対しオープンかつ公正で差別のないビジネス環境を提供しているのか疑問だ」とツイートし、経済的な報復を匂わせました。

ボリス・ジョンソン英首相は1月28日、ファーウェイの5G参入を周辺機器に限り認め、周辺機器の市場占有率に35%の上限を設けました。EU離脱で経済に影響が出るのを最小限に抑えるため、ファーウェイ排除を求めるアメリカの圧力を払い除け、中国への配慮を示しました。

しかし英中共同宣言の「香港返還50年後の2047年まで『一国二制度』と『高度な自治』を守る」という国際公約を中国が香港国家安全法の強行で踏みにじったことで英中関係は完全に決裂。ジョンソン首相は議会の対中強硬論とアメリカのさらなる圧力に抗しきれなくなりました。

■排除のコストは2700億円

英国家サイバー・セキュリティー・センター(NCSC)はこの日「5月の米政府の追加制裁によりファーウェイはアメリカの技術が使えなくなり、サプライチェーンが混乱する危険性が高い。ファーウェイ機器は交換も更新もできなくなる恐れがある」と指摘しました。

これを受けてジョンソン首相は国家安全保障会議(NSC)でファーウェイ全面排除を決めました。

ジョンソン政権は電気通信セキュリティー法を制定、今年末から電気通信・携帯電話事業会社がファーウェイの5G機器を購入できないようにします。2027年までにファーウェイ機器を5Gネットワークから完全に排除します。

1月の限定容認ですでにイギリスの5G導入は1年遅れ、最大10億ポンド(約1350億円)のコストがかかると予想されていました。今回の全面排除決定で導入は2~3年遅れ、コストは最大20億ポンド(約2700億円)にまで膨れ上がります。

■日系企業にチャンス

マイク・ポンペオ米国務長官は「イギリスのファーウェイ排除を歓迎する。5G機器とソフトウェアが国家安全保障、経済安全保障、プライバシー、知的財産権、人権を脅かさないと信頼できる必要がある」との考えを表明、ファーウェイを排除した国や企業名を挙げました。

【禁止した国】
アメリカ、イギリス、スウェーデン、ポーランド、デンマーク、チェコ、ラトビア、エストニア、ルーマニア

【禁止した企業】
日本(NTT)、インド(ジオ)、オーストラリア(テルストラ)、韓国(SKテレコム、KT)

(続く)

コメント

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  • No.1 真田幸隆

    20/07/16 15:07:29

    (続き)
    英紙デーリー・テレグラフによると、ファーウェイが英大学に資金提供したり共同執筆したりした17件の論文は軍事転用が可能な先端技術に関係していました。ドローン(無人航空機)の編隊と通信する技術や市民監視に利用できる高度な画像認識ソフトの研究も含まれていました。

    ダウデン氏はファーウェイを排除した後の対策を3つ挙げました。

    (1)サプライチェーンを保護し、ネットワークに混乱が生じないようにするため対策と緩和策を講じる。リスクのないサプライヤーを確保する。

    (2)参入障壁を取り除き、新しいベンダーがイギリス市場に参入するための大きな機会をつくる。

    (3)研究開発に投資し、オペレーターとベンダー間のパートナーシップを構築する。

    ■NECや富士通はどこまで頑張れるか

    ファーウェイに代わる選択肢はノキア(フィンランド)、エリクソン(スウェーデン)、サムスン電子(韓国)、NEC(日本)です。

    日本の経済産業省は6月29日、5Gやポスト5G開発のため700億円規模で富士通やNECなど国内メーカーを支援すると発表したばかり。NTTもNECに約600億円出資し、5Gなどの情報通信技術を共同開発する方針を明らかにしています。

    米Dell’Oroグループによると、昨年の電気通信インフラのシェアはファーウェイ28%(2018年も28%)、ノキア16%(17%)、エリクソン14%(14%)、中国のZTE10%(8%)、米シスコ7%(8%)。ファーウェイは2014年の20%からシェアを伸ばしています。

    独統計サービス会社statistaによると、5Gの特許出願数はファーウェイが3147件で最も多く、サムスン電子が2位で2795件。ZTEは3位で2561件。あとはLG(韓国)2300件、ノキア2149件、エリクソン1494件、クアルコム(米国)1293件、インテル(米国)870件と続きます。

    NECや富士通など日本勢はどこまで頑張れるのでしょうか。

    (おわり)

    https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200715-00188221/

    ***

    ・木村正人
    在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。

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