• No.1 朱鳥

    20/07/11 12:46:50

    ◆正しさは常に平和とともにあるわけではない

    一方、バイデン元副大統領が政権を担うことになればどうなるだろうか。選挙戦を通じてバイデンの外交・安全保障政策はいまだ全体像が見えてこない。ただし、バイデン元副大統領自身がForeign Affairsに寄稿した論文を読む限り、筆者は一抹の不安を感じざるを得ない。

    同論文の中でバイデン氏は就任1年目に(1)政府腐敗との闘い、(2)権威主義からの防衛、(3)自国及び外国での人権の促進という3つのコミットメントを引き出す民主国家のためのグローバルサミットの開催を明言している

    筆者はその趣旨に何ら異論はない。そして、バイデン元副大統領が述べているように、日本を含めた同盟国とその取り組みを進めていくことは政治的に正しい方向性だろう。しかし、正しさは常に平和とともにあるわけではない。

    バイデン元副大統領はトランプ政権が軍事費を増加させることで再建した米軍をどのように運用するのだろうか。トランプ政権下で干されていたネオコン勢力が復活し、価値観による外交・安全保障を復活させた場合、その正しさは新たな戦渦を生み出す可能性が存在している。我々日本人はその戦渦がもたされる場所が中東ではなく東アジア・東南アジアになることも十分に想定するべきだろう。

    トランプ政権は良かれ悪しかれ戦争や紛争を巻き起こすほど十分な軍事力や外交力を持つことはできなかった。しかし、仮にバイデン政権が誕生した場合、それらを作り出すだけの軍事力は既に回復しており、それらを正当化する「政治的な正しさ」も存在している。

    もちろん戦時大統領以外は「戦争」を明言する大統領候補者は存在しない。筆者はバイデン元副大統領、そして民主党が持つ同盟国と歩調を合わせた敵対国への非妥協的なアプローチは、敵対国との偶発的な衝突を発生させるのではないかと危惧している。バイデン政権下において、戦争や紛争による惨事を回避するために、我々が何をできるかを真剣に考えるべきだろう。


    ・渡瀬 裕哉
    国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
    1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。

    https://www.newsweekjapan.jp/watase/2020/06/vs_2.php

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