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- 延享
- 20/05/13 12:06:33
「PCR検査せよ」と叫ぶ人に知って欲しい問題
ウイルス専門の西村秀一医師が現場から発信
2020/05/12 6:00
(略)
国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長の西村秀一医師へのインタビューを行った。ウイルスセンターは国内では数少ない臨床ウイルス学の研究施設であり、全国の医療機関から依頼を受け、ウイルス分離や血清学的検査を行っている。PCR検査の現場をよく知る立場からの問題提起である。「感染者数をごまかしたいから、政府は検査しない」という話がSNSなどでは広まっている。だが、現場の話からはそうした見方とは別の厳しい現実が見えてくる。
特効薬がない中で、重要なのは命をつなぐ治療だ
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――PCR検査では偽陰性(感染しているのに検出されない)、偽陽性(感染していないのに検出されてしまう)の問題があって、わかることには限界があるとおっしゃっていますね。
検体採取の仕方がまずいと「ある」ものも「ない」ということになる。だからPCR検査をやって陰性だから安心だということにはならない。職場から「陰性の証明を持ってこいといわれた」という話があるが、そのときに陰性でも翌日に陽性になることもある。つまり、検査を受けた人にとって「陰性」という結果の使いみちはないんです。
PCRの感度が高すぎることによる弊害もあって、偽陽性の可能性もある。PCR検査は検体内のウイルスの遺伝子を対象にしている。本来の感染管理では生きているウイルスの情報が必要だが、それを得ることができないためだ。そうすると、ウイルスの死骸にたまたま触れて鼻をさわったというようなときも陽性になりうる。本当に陽性であっても、生きているウイルスではなく人に感染させない不活性ウイルスかもしれない。
――そうすると、陰性だったから安心して活動できる、陽性だから隔離しないといけない、という判断には使えないということですね。
だから、PCR検査をする目的はなんですか、と問いかけたい。
インフルエンザのように効く薬があってすぐに処方してくれるということなら、やる意味はあるでしょう。「陽性」という結果は役に立つことになる。そうではない現状ではやみくもな検査は意味がない。
いつまでもやってくれないという話が出ているが、症状が悪化したらCTを撮ったり呼吸を見たりして肺炎の治療をきちんとやっているわけです。特効薬がない中では命をつなぐ治療が重要だ。
もしコロナだったら家族にうつしたくないから知りたいという要請はわかる。東京では院内感染が起きているので、医者が心配だというのも共感します。ただ、インフルエンザ並みに市中に感染が広がっているわけではない。全体としてコロナにかかっている人はごくわずかな中で、とりあえずコロナかどうか確認したいから検査をするということは、PCR検査に関わる資源に限りがある以上、無理な話だ。また、陰性だから安心できるというものではなく、防御はいずれにしても必要だ。
■検査を担う技師の育成は一朝一夕にできない
――検査資源という意味ではどこがネックになっているんでしょうか。政府は保健所が業務過多なので、医師会と協力して地域外来・検査センターなどを増やすと言っています。
増やしたとか増やすとかと言っているところは検体を採取するところであって、そこで検査ができるわけではない。それが送られてきて実際に検査する地方の衛生研究所がもうギリギリの状態だ。今でも人材も設備も不足しているのに、細いパイプの中に無理に大量の検体を流し込むような状況になる。特に検査技師の問題は大きい。
――多くのメディアでは検体採取を行う保健所の話ばかりで検査の現場の話はあまり出てきません。検査をする技師には専門性と熟練が必要だそうですね。
マイクロリットル単位で何種類もの試薬を順番を間違えずに加えるという根気と技術力の必要な仕事だ。キャラクターの問題もある。私は長く見てきているし、部下を適材適所で配属しなければならない立場なので、向いている人と向いていない人の違いがわかる。長期間根気よくコツコツと取り組める人でないと向かない。自信満々であったり乱暴な雑な人がやるとダメ。それに手先が器用でないとできない。
大本のボトルを汚してしまって全部陽性になったという事故もこれまでいろんなところで聞いている。空中にウイルスが飛んで他の検体に落ちてしまうようなことがないように部屋を分けて、管理に細心の注意を払うことも必要だ。昔からPCRはたいへんだといわれる。その技術を持つ人の養成は一朝一夕にはいかない。
続き>>1 ■無理をすると「検査崩壊」になる
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