日本経済が「新型肺炎」で大混乱に陥ることはない理由

匿名

養和

20/03/30 16:09:39

2020.2.21 5:10

新型肺炎が日本経済に与える影響には、「生産の減少」「国内需要の減少」「中国経済の落ち込み」という3つの経路が考えられる。これらから考えて、景気の後退は免れないだろうが、その先の日本経済はどれだけ悪化する可能性があるのか。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)

■「生産の減少」「中国人旅行客の減少」の影響は意外と小さい

 新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。今後どこまで感染が拡大するのか見通せない中で、景気への影響を論じるのは難しいが、本稿では「外国でも国内でも広がりは限定的で、騒ぎは数カ月でおおむね沈静化する」という仮定に基づいて考えてみたい。

 ご存じのように中国では新型肺炎が猛威を振るっている。中国企業は生産活動を例年の春節以上の長期にわたって休止し、その後も本格的な生産活動に戻れていない工場も多いようだ。

 経済はグローバル化しており、中国製の部品を生産に用いている日本企業も多いので、部品が入手できないと生産が止まってしまう日本国内の工場もあるという。

 こうした現象は、簡単に目で見えるので、マスコミが取材して記事にすることが容易である。「生産がこれだけ落ち込んだから、GDPがどれだけ落ち込むだろう」といった計算も簡単だ。

 しかし、実のところ、生産の減少が世界経済に与える影響は限定的だ。今月満たされなかった需要は来月の増産によって満たされるはずだからである。

 日本で生産できない分が、世界の他の地域で生産されたものの輸入によって代替されれば(そうなれば日本経済には打撃だが)、世界経済への打撃は限定的だろう。

 したがって、世界の株式市場が意外なほど冷静なのは、「新型肺炎騒ぎが落ち着けば、生産が戻り、満たされなかった需要がフル生産で取り戻される」と考えてのものだとすれば、合理的なのかもしれない。

 日本国内では、中国人旅行客が減り、ホテルや土産物店等々の売り上げが減るなどの影響も出ている。こうした需要の減少による影響は、当事者にとっては決して小さいとはいえないが、日本経済全体に占めるウエイトは限定的といえる。

 今後、日本が新型肺炎の“汚染地域”として世界中から認識され、インバウンド需要が激減する事態に陥れば影響は大きいかもしれないが、それでも旅行収支の受取(外国人が日本で使った金額)はGDPの1%程度であるから、深刻な打撃にはなりそうもない。

■問題は「消費と投資の落ち込み」

 それ以上に大きな問題は、日本人消費者による個人消費の落ち込みである。新型肺炎の影響で、人混みを避けようとすでに行楽を諦めた人は多いだろう。今後、国内での流行が仮に広がれば、行楽のみならず外食やショッピングを控える人も増えるかもしれない。

 そうした消費の減少は、失われてしまうとなかなか回復しない。製造業の生産は在庫払底を取り戻すための大増産で埋め戻されるが、「新型肺炎が落ち着いたから、今月は先月行かなかった分と合わせて出掛けよう」とする人は少ないだろうから。

 日本国内における個人消費は巨額であり、それが手控えられると経済への影響は甚大である。統計で消費の実態をつかむのは容易ではなく、マスコミ報道などにも登場しにくいが、注目しておきたい要素である。

 また、先行き不透明な時には、企業は設備投資を手控える。その動きが広がると、鉄やセメントや設備機械等々の売れ行きが落ち込み、国内の景気には大きな下押しの力が加わることとなる。

 幸いなのは、こうした需要の落ち込みが「雇用の減少を通じて個人所得を減少させ、さらなる個人消費の減少をもたらす」可能性が大きくないことである。今の日本は労働力不足であるから、仮にリストラや倒産等で失業する労働者が出ても、すぐに次の仕事が見つかるため、家計の所得が落ち込まず、消費も落ち込まずに済む。

 家計の所得が落ち込んでしまうと、騒動が一段落した後も個人消費が戻らない懸念があるが、とりあえずそうした懸念は小さいと考えてよいだろう。

>>1に続く

コメント

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  • No.1 養和

    20/03/30 16:10:01

    ■中国経済の大混乱で輸出が激減する可能性も

     中国経済がどの程度の打撃を受けるのかは、全くの未知数であるが、人の行き来が大規模に制限されていれば、経済活動にも大きな混乱が生じるに違いない。

     問題は、騒ぎが起きる前から倒産や不良債権が増加しつつあったことである。生産活動が止まった企業が大量に倒産したりすれば、一気に信用が収縮する可能性もあろう。

     貸し手が「倒産が増えそうだから、当分の間、金は貸さずに静かにしていよう」と考えると、借り手は必要な資金が借りられず、赤字でもないのに倒産してしまう事態が起こりかねない。

     そうなれば、日本の中国向け輸出が激減するであろう。それによって輸出企業がリストラを余儀なくされるかもしれない。もっとも、上記と同様に、労働力不足であるから失業は増えず、個人消費のさらなる落ち込みにはつながらないと考えてよいであろう。

     ちなみに、先ほど部品会社の生産停止の影響は一時的であるとしたが、倒産してしまうと話は異なる。「部品会社の生産が戻れば」という前提が崩れると、日本国内の生産に大きな影響が出るかもしれない。

     そうなる可能性を認識して、各メーカーが部品会社の資金繰りを支援する用意をしたり、代替部品の調達先を探し始めたりしているであろうから、影響は限定的だと期待しているが、定かではないため、今後も影響を注視していくべきだろう。

     なお、「中国が大混乱してリーマンショックのような大不況が来る」と考える人もいるだろうが、筆者は2つの理由でそうは考えていない。1つは世界経済への影響が小さいこと、もう1つは日本経済の景気の波が小さくなっていることである。詳しくは、次回改めて述べることとしたい。

    塚崎公義:経済評論家

    DIAMOND online
    https://diamond.jp/articles/-/229499

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