コロナ経済対策の「現金給付」や「消費減税」は本当に正しいか

匿名

安元

20/03/30 15:41:11

2020.3.30 4:45

┃何のための現金給付か
┃“規模”先行で議論は混乱

 世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言した新型コロナウイルスの感染拡大で、各国政府は金融緩和に加えて、大規模な財政出動を検討している。

 米国トランプ政権は1兆ドル規模の経済対策を打ち出し、うち家計には1人当たり1200ドルの現金を配るという。

 日本では小学校の休校で保護者が仕事を休まざるを得ないとき、収入を補償する新たな制度が創設されたほか、4月に取りまとめる緊急経済対策の検討が始まった。

「総額30兆円超」など規模の議論が先行し、「現金給付」「消費税率0%」などの主張が飛び交うが、未曽有の経験の前に議論は混乱しているように思われる。

┃一律の給付は人気取り
┃今は景気より生活支援優先

 正しい政策は何なのか。

 安倍晋三首相は「日本経済がV字回復できるよう思い切った経済政策を進めていきたい」とする。しかし今、優先すべきは経済の「V字回復」なのだろうか。

 現金給付を巡る議論などでも違和感がある。

 手厚い現金給付でもって消費を拡大させるという声がある。「消費税率ゼロ」などのように消費税の減税を求める意見もあるが意図は同様だ。

 しかし、感染拡大の防止が優先課題とされる現状で、目先の消費喚起は人と人の濃厚接触を増やしかねない。イベントの自粛など意図的に経済活動を抑えている対策にかなわない。

 そもそも先行きが不確実な状況では、給付が消費に回ることは見込めないだろう。

 リーマンショックのときも、1人当たり1万2000円が支給され、65歳以上および18歳以下は6000円が上乗せされた。だが当時の給付も多くは貯蓄に回ったという試算もある。

 また、全ての業種で一様に消費が落ち込んでいるわけではないことに留意する必要がある。

 映画館・遊園地等の娯楽施設や航空旅客、居酒屋などの消費が落ち込む一方、スーパー、医薬品、酒屋などは上昇している。

 つまり、一律の現金給付であれ、消費税の減税であれ、本当に困っている企業や就業者を助けることにはならない。

 国民一律の給付は人気取りという意味で「政治的」には効果がありそうだ。しかし、真に困窮する家計の救済や持続的な成長といった「経済的」な効果は疑わしい。

 現金給付の目的は、収入減にさいなまれる家計が急場をしのぐための生活支援であるべきだ。

 中小・零細事業者への支援としては当面の資金繰りを支える実質的無利子・無担保の融資がある。雇用調整助成金の拡充を含めて、企業の倒産を避け雇用を維持することが狙いだ。

 経済対策の目的は景気浮揚か、生活支援か。

 現時点で優先すべきは生活と雇用を守り経済・社会の機能を維持することだろう。

>>1に続く

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