しまむら、苦境の裏で決めた「異例の社長交代」

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  • 康平
  • 20/02/01 11:05:16

新体制で起死回生となるか――。

 アパレル大手のしまむらは1月27日、トップ交代人事を発表した。2月21日付で現・取締役執行役員の鈴木誠氏(54歳)が同社5代目の新社長に昇格し、北島常好社長(61歳)は代表権のない会長に就く。

【グラフ】しまむらは客数減少で3期連続の減収が濃厚に

 2018年2月に就任した北島社長はわずか2年での退任となる。しまむらはリリース上で、社長交代の理由を「様々な課題への対応スピードを上げることで、業績回復と今後の成長を目指す」ためと説明。新社長となる鈴木氏は1989年の入社以降、物流やシステム開発関連の部門で実績を積み、2018年からは企画室長を務めている。

 社長交代発表後、東洋経済の取材に応じた鈴木氏は、「社長と会長の2人体制で商品力強化などを進め、客数の回復に努めたい」と語った。

■客離れの深刻化で業績は低迷

 社長の任期について、しまむら社内に明確な規程はない。ただ、同社の歴代社長の在任期間を振り返ると、前社長の野中正人氏が13年弱、2代前の社長を務めた現・相談役の藤原秀次郎氏が15年と、10年以上の“長期政権”が続いてきた。それと比べれば今回は異例の早さでの社長交代だ。北島社長の就任後に始まった2020年度までの3カ年中期経営計画も、道半ばで退任することとなる。

 唐突なトップ交代の裏には、どんな事情があったのか。背景にあるのが、長引く業績の低迷だ。

 圧倒的な低価格と雑多な品ぞろえで、30~50代前後の女性顧客を数多く獲得してきたしまむらは、「裏地あったかパンツ」などのPB商品が大ヒットした2016年度に売上高と営業利益が過去最高を記録。だが、その後は新たなヒット商品が生まれず、売り場を整理する過程でのアイテム数の絞り込みなども裏目に出て、顧客離れを引き起こした。

 9期ぶりの減収を期した2017年度に前社長の野中氏は退任。厳しい経営環境のさなかで北島社長がバトンを受け継いだ後、業績不振はさらに深刻度合いを増していった。

 北島社長は就任直後、早期の客数回復を目指して過度な低価格セールを相次ぎ打ち出した。が、「安さだけでは不要なものは買わない」という消費者意識の高まりもあり、想定していたほどの客数増にはつながらなかった。商品単価の下落で粗利率も悪化し、2018年度は2期連続の減収減益となった。>>1

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    • 20/02/01 11:06:51

    その後も売り場レイアウトの見直しや、トレンド対応強化のための短納期生産の拡充など、改善策は講じているものの、直近2年間の既存店売上高は2018年4月と2019年8月を除いて前年割れが続いている。

     寝具に特化した店舗など新業態を試験展開するも成果は出ず、今2019年度も3期連続の減収が濃厚となった。こうした事情を踏まえれば、業績悪化に歯止めを掛けたいという焦りがトップの交代につながったことは間違いないだろう。

    ■空白だった会長職

     一方、今回の人事には経営体制の強化という意味合いも大きいようだ。

     前任の野中氏が2005年に社長に就任した際は、同社の“中興の祖”とも言われる藤原氏が4年間会長として残り、2011年から15年の間は元専務取締役の福真昭彦氏が会長に就いた。所々で空白期間はありながらも、中長期的な会社の成長に向けた対外活動などに当たる会長と業務執行全般を担う社長のツートップ体制での経営が基本だった。

     だが北島社長に交代後、会長に就いた野中氏は体調悪化により、わずか10カ月で退任。会長職が不在のまま、実質的に大半の期間において北島社長が1人で経営の重要任務を担ってきた。社長が対応する業務の範囲が広がっていった結果、「新たに取り組んだ施策の多くが中途半端になってしまった」(鈴木氏)。

     今後はツートップ体制の下、社長の鈴木氏が足元の業績回復に向けた施策の遂行に集中的に取り組むという。会長となる北島社長は営業畑を歩んできた経験を生かし、約400社のサプライヤーとの連携強化などを進めて商品力の向上につなげる方針だ。

     もっとも、新体制となったところで、抜本的な改革が断行できない限り、苦境からの脱却は遠のくばかりだ。しまむらの業績低迷の根底には、同社が強みとしてきたビジネスモデルのひずみも見え隠れする。

     現在、グループ全体で約2200店舗を展開する同社の根幹を支えるのが、徹底したチェーンストアオペレーションとローコスト経営だ。商品投入から店舗運営、物流までを本部で集中管理する仕組みにより、しまむらは無駄なコストを省いて均質的なサービスを実現してきた。

    • 0
    • 20/02/01 11:07:28

    店舗の運営には膨大なマニュアルを活用し、配置するスタッフの数を最小限に抑制。狭い商圏に集中出店するドミナント戦略をベースに、効率的な商品配送を行える自前の物流網も確立している。

    ■都市部では自社競合が発生

     だが、店舗数拡大に伴い、従来の郊外型ロードサイド店だけでなく、最近は都市部の商業施設への出店も増加。関西の都市部などでは自社競合が発生し始めた。さらに少子高齢化やネット通販の拡大など消費環境の変化を受け、地方店舗でも売り上げにばらつきが発生し、不採算店が増えるようになった。

     これまでしまむらは特別な事情がない限り、赤字が続いても退店を極力行わない方針を貫いてきた。だが、収益改善に向けては店舗網の精査が避けて通れなくなっている。鈴木氏は「今はもうバンバンと店を出す時代ではない。現状100店舗ほど赤字店舗があり、今後数年間にわたってこれらを整理していく」と語る。

     商品施策においても、本部主導で行う在庫管理のずさんさが目立ち始めている。店舗立地が地方から都市部まで多様化した今、同じ「ファッションセンター しまむら」と言っても店舗によって顧客層は大きく異なる。

     にもかかわらず、しまむらではサプライヤーから仕入れた膨大な種類の商品をどの店に何枚投入するかは、主に本部の担当者の勘に頼って決めてきた。値引きも個店ごとの判断ではなく、全国もしくは地域別に一律で行うことが基本だ。結果として、店舗によっては売れるはずの商品が足りず、逆に需要の少ない商品が大量に投入されるといった事態が起きやすくなっている。

    ■商品部の人員を1割増やす

     こうした状況には会社側も課題意識を持ち、個店別に最適な量やタイミングで発注・値引きを行うための商品管理システムを来期から導入する予定という。「品ぞろえを全国一律で考えるのではなく、顧客層など店舗ごとの特性に応じた商品管理を徹底したい」(鈴木氏)。

     主力業態の「ファッションセンターしまむら」では、仕入れや在庫管理を担う商品部の人員を来期から約1割増やす方針。より顧客の需要を見極めた商品の仕入れや店舗への配分を実現できる体制を整える。

     鈴木氏は「まずは集客の回復を最優先し、2021年度以降は取り扱うアイテムの拡充など業容拡大を検討する」と強調する。今年の秋には、ようやく自社のネット通販サイトも始動する見通しだ。”デフレの寵児”と呼ばれたしまむらは、消費者の価値観や購買手法も多様化した現代に再成長の一歩を踏み出せるのか。新体制で向き合う課題は山積している。

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