• No.5 慶応

    19/08/09 16:13:23

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    〈「帰れ、ブタ野郎」
    1997年9月18日、私たち夫婦が6月28日の逮捕以来、初めて神戸少年鑑別所に収容された長男Aに面会に行ったとき、まず息子から浴びせられたのがこの言葉でした。
    「誰が何と言おうと、Aはお父さんとお母さんの子供やから、家族五人で頑張って行こうな」と、夫が声をかけたそのとき、私たち二人はこう怒鳴られたのです。
    鉄格子の付いた重い鉄の扉の奥の、青のペンキが剝げかかって緑に変色したような壁に囲まれた、狭い正方形の面談室。並べてあったパイプ椅子に座り、テーブルを挟んでAと向かい合いました。あの子は最初、身じろぎもせずこちらに顔を向けたまま、ジーッと黙って椅子に腰掛けていました。
    しかし、私たちが声をかけたとたん、
    「帰れーっ」
    「会わないと言ったのに、何で来やがったんや」
    火が付いたように怒鳴り出しました。
    そして、これまで一度として見せたこともない、すごい形相で私たちを睨みつけました。
    《あの子のあの目――》
    涙をいっぱいに溜め、グーッと上目使いで、心底から私たちを憎んでいるという目――。
    あまりのショックと驚きで、私は一瞬、金縛りに遭ったように体が強張ってしまいました。(中略)
    15分ほど私たちは顔を向き合わせていたのですが、最後まで「帰れっ」とAに怒鳴られ、睨まれ続けていました。
    この子は私のせいで、こんなことになってしまったのではないか? 
    Aは目で私にそう抗議している。
    《私のせいなんや……》(中略)
    私たち親は正直言って、この時点まで、息子があの恐ろしい事件を起こした犯人とは、とても考えられませんでした。どうしても納得することができませんでした。
    あの子の口から真実を聞くまでは、信じられない。きっと何かの間違いに違いない。
    いや、間違いであってほしい。たとえその確率が、0.1パーセント、いえ0.01パーセントでもいい。その可能性を信じたいという、藁にも縋る思いで、その日鑑別所の面談室を訪ねたのです。〉(同書)
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