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- 19/07/18 11:52:38
7/18(木) 11:30
教員(右)から仕事を依頼されるスクールサポートスタッフ=大阪府東大阪市の市立柏田中(前川純一郎撮影)
日本の先生は世界で一番忙しい-。経済協力開発機構(OECD)が6月にまとめた世界の小中学校教員の勤務実態調査でも明らかになった、教員の長時間労働。生徒指導や部活動、会議の資料作りといった授業以外の負担が重くのしかかり、知識や専門性を高めるための時間が十分に確保できない。教員たちは、過酷な現実にさらされていた。
■電話相談に3時間
「起きられない児童を毎朝迎えに行っていた。教員の仕事の範囲を超えていたと思います」
大阪市立小の教員だった40代の女性はこうため息をついた。以前担任をしていた学級に、母子ともに朝起きられない家庭があった。毎朝家庭訪問して起こし、食事や着替えを促して一緒に登校。遅刻をすれば学級運営に支障が出るので必死だった。「虐待など、行政や警察が介入するほどの問題を抱えるわけではない。そんな家庭は、学校がサポートせざるを得ない」と実情を打ち明ける。
さらに、放課後は校内のさまざまな行事の準備に追われる。会議が多く、資料作りなどの事務も膨大だ。そこへ追い打ちをかけるように保護者からの電話相談が、ときには3時間を超えることも。「1人でこなせる負担を超えていた。定時に帰れることはまずなかったが、それでも教材研究には手が回らなかった」
OECDが公表した48カ国・地域の中学校と15カ国・地域の小学校の調査では、日本の教員の1週間あたりの勤務時間は中学校が56時間、小学校が54・4時間といずれも最長だった。
特に中学校の教員の事務業務に費やす時間は平均の2倍以上と長く、逆に知識や専門性を高めるための職能開発に充てた時間は平均を下回った。大阪大大学院の中沢渉教授(教育社会学)は「職務分担が明確で教科指導に特化できる欧米の教員と違い、日本は生徒指導や部活動、保護者対応など仕事の範囲が広すぎる」と指摘する。
■残業、月80時間
自ら交渉して業務を減らした教員もいる。大阪府南部の公立中で理科を教える女性教諭(40代)は数年前、出産を機に運動部の顧問と担任の業務を辞退。それまでは土日も休めず、平均残業時間は「過労死ライン」とされる月80時間を超えていたが、今では月約20時間に減った。「部活動は本来は生徒による自主的な活動。顧問は教員の義務ではないが、ほとんどの教員が引き受けており、当初は冷たい目で見られた」と振り返る。
だが、「育児をしながらの限られた勤務時間で、授業の質を高めることこそ大事。そのために顧問と担任を諦めるのはやむを得なかった」。育児だけでなく介護や病気などで働き方を見直せるような職場環境になるよう願っている。
■文科省対策「先生も夏休みを」
教員の過重労働を重く見た文部科学省は、平成29年12月、部活動や事務仕事への外部スタッフの活用などを盛り込んだ「緊急対策」を決定。30年度から学校の事務仕事を担う「スクール・サポート・スタッフ」(SSS)の配置を進め、今年度は全国で3600人を採用した。今後も人数を増やしたい考えだ。
大阪府東大阪市立柏田中学校は今年度、元教員で子育て経験のある女性(40)をSSSとして採用した。学校ホームページの更新やプリント印刷、校内清掃などを担い、新屋和昭校長(60)は「教員は喜んでいる」という。
同中では週2日の部活動休止日、週1日の定時帰宅日も設定している。だが、新屋校長は「空いた時間を教材研究に費やす教員も多い。勤務時間を減らすには、意識改革が必要だ」と訴える。
文科省は夏休みに教員がまとまった休日を確保できるよう、長期間の学校閉庁日の設定を要請する通知を6月末、全国の都道府県・政令市教委に送付。研修についても、報告書を簡素化したり、内容を見直したりするよう求めた。文科省の担当者は「教員の働き方改革は道半ば。業務を1つずつ見直し、休めるときにしっかりと休んで本来の業務に注力できる環境作りを進める」としている。(木ノ下めぐみ)
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