急上昇
寛仁
彼女は6人家族。父と母、3人の弟とひとつ屋根の下で暮らしていたものの、
〈(被害者は)母とは不仲で、同女に対して不信感を抱いていたため、同女に対して被告人から性的虐待を受けていることを含めて悩み事などを相談することはできなかった〉
それに加えて被害者は、小学生の頃から父に殴ったり蹴ったりを繰り返された。
〈母は、被告人がA(註=被害者女性)に暴力を振るった際、あまりにひどいときに口頭で止める程度のことをするのみで、ほとんどは黙って見ていたり、被告人に加勢したりしていた〉
このような家庭環境に育った彼女が中学2年生になった頃、父親は頻繁に娘の胸などを触り始めた挙句、
〈その年の冬頃から性交を行うようになった。(中略)高校を卒業するまでの間、週に1、2回程度の頻度で行われていた〉
〈その頻度は専門学校入学前から増加して週に3、4回程度となっていた〉
鬼畜の所業
むろん、彼女も父の執拗な要求を黙って受け入れていたわけではない。思い切って弟たちに今までの苦悩を打ち明けたところ、被害に遭わぬよう同じ部屋で寝ることを提案されたという。
結果、父親からの虐待はおさまったかに見えたが、
〈弟らが同じ部屋で寝るのを止めるようになると、被告人は再びAの寝室に入り込んで性交を含む性的行為を行うようになり、その頻度は従前よりも増加した〉
そのため、彼女は父への抵抗を試みたりもした。
〈被告人の手を払ったり、執拗にAのズボンを下げようとするのを引き上げたりして抵抗したところ、被告人からこめかみの辺りを数回拳で殴られ、太ももやふくらはぎを蹴られた上、背中の中心付近を足の裏で2、3回踏みつけられたことがあった〉
娘の反撃に対して憤り、暴虐の限りを尽くした父親は、その時は事に及ぶことを諦めたそうだが、こんな捨て台詞を口にしたと続く。
〈一連の暴行の後、Aの耳元で「金を取るだけ取って何もしないじゃないか。」〉
実はこの時、被害者は金銭的にも父から“束縛”を受けていたのである。
高校を出た後、大学進学を希望していた彼女は見事、推薦入試に合格した。それにもかかわらず、父が入学費用を一部しか用立てることができなかったため断念。
改めて専門学校に進学したいと思ったところ、ここでも父や母に学費が高いと反対される。最終的には入学金や授業料を父が支払う形になったが、理不尽な要求は続く。父親は未成年の娘に対してこんな注文をつけてきたのだ。
〈(専門学校にかかる)当該費用と生活費等を併せた金額を返済することと取り決められた。当初、被告人はAに対し月8万円を返済するよう求めたが、Aの希望により返済額は4万円とされた〉
勉学に勤しむべき彼女は、アルバイトで稼いだ月収の半分を、家に納めることになったという。金銭的な面については、個々の家庭によって様々な事情があるのは否めない。とはいえ、心身共に傷ついた彼女が、さらに金銭的にも父に対して負い目を感じ、従属関係が強化されていったであろうことは論を俟たない。
ゆえに、彼女はなかなか外部に助けを求めることもできない状態に陥る。警察に訴えたところで、大黒柱である父親が逮捕されたら一家は生活していけるのか。
そんな心配もあった彼女はこうも打ち明けている。
〈弟らが犯罪者の息子になってしまい、弟らが生活できなくなってしまうことが心配〉
可愛いはずの我が子をここまで追い込む。まさに鬼畜の所業と言う他ないが、さらに驚くべきは、ここまで触れてきた凌辱事件に至る経緯を、裁判長は判決で「事実」として「認定」したにも拘らず、最終的に「無罪」としたことである。
“抵抗が可能だった”?
「今回、父親は準強制性交等罪で起訴されていますが、この罪は暴力や脅迫がなくても、被害者が抵抗が難しい状態に乗じて、性交する場合に成立します」
とは、犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長で弁護士の上谷さくら氏だ。
「判決で不可解なのは、被害者が中学2年生から性的虐待を受け続け、心理的に抵抗する意欲を奪われるような状態であったことを認めながらも、罪に問われた2年前の事件については『抵抗が可能だった』と判断している点です」
いったいどういうことか。社会部記者が話を継ぐ
>>1続く
http://news.livedoor.com/article/detail/16328279/
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