匿名
<もう一度会いたい>喪失感 夫婦に溝生む
河北新報 2015年12月11日 12時02分
◎(9)言い争いが絶えず
仮設住宅に移って初めての年の瀬だったと思う。
今野ひとみさん(45)=宮城県石巻市=は夫の浩行さん(53)に1泊の温泉旅行を持ち掛けた。震災で3人の子を亡くしてからどこにも行っていない。
仮設の風呂は狭い。たまには広い湯船で脚を伸ばしたい。
「俺は行かん。位牌(いはい)と遺影はここにある。子どもたちを置いて出掛ける気にはなれん」
返事は素っ気なかった。
旅の提案は夫を思ってのことでもある。毎日ふさぎ込んでいるから、気晴らしになるだろうと。
厚意を蹴飛ばされた気がした。
<離婚の話も>
「あんたのために言ってんだよ」
「行くなら一人で行け」
夫も言い返す。口げんかで収まらず、取っ組み合いになった。
夫とはいえ、相手は大男だ。勝ち目はない。苦し紛れで110番した。
こけ脅しのつもりだったので1回の呼び出し音で切ったが、逆探知され、パトカーが駆け付けた。
お巡りさんに事の次第を話す。たっぷり油を搾られ、お引き取り願った。
サイレン音を聞き付けた住人も集まって来た。「何でもありませんから」と罰の悪い顔で人払いする。
けんかが絶えなくなった。
普段なら聞き流せることも、気持ちがささくれ立っているせいか、いちいち気に障る。
仏壇を作る作らない。
「仏壇設けようよ。仮設で持っていないのはうちとあと1軒だけらしいよ」
「そのうち新しい家を建てんだから。そん時立派なやつ設けるから今は簡易なので辛抱しろって」
宗教に入る入らない。
「知り合いに入会勧められたの。見込まれたら支部長にしてくれるって」
「そんなうさんくさい話に乗れっか。この間もばか高い鍋買わされそうになったろ」
毎度エスカレートし、決まって離婚話に発展する。
「役場から届もらって来て」
「ああ分かった。後悔しても遅いかんな」
夫は役場の支所に取りに行き、自分の判を押して妻に渡す。
<法外な要求>
「慰謝料6000万円。別れんならよこせ」
妻が吹っ掛けてくる。
「そんな大金あるわけねえべ」
「だったらこの話は無しだ」
妻は届をビリビリと破った。
何日かしたら別の火種でもめる。
夫はまたもらいに行く。前回と窓口が同じだと恥ずかしいから、違う支所にする。
「6000万」
妻は今度も法外な要求をする。
「だから払えねえって」 届はごみ箱行きになる。
この繰り返しだ。
妻は実は夫と別れようとはこれっぽっちも思っていない。カッカとした勢いで別れ話を持ち出したはいいものの、収めるに収められなくなっただけだ。無理難題を突き付けて離婚話をご破算にし、結局夫をつなぎ留めている。
そんな女心に夫は気付いていないのか、気付いていないふりをしているだけなのか。
ひとみさんはまだ浩行さんに確かめていない。
http://topics.smt.docomo.ne.jp/article/kahoku/region/kahoku-01_20151211_13012?fm=topics
古トピの為、これ以上コメントできません
件~件 ( 全0件)
*コメント欄のパトロールでYahoo!ニュースのAIを使用しています
ママスタコミュニティはみんなで利用する共有の掲示板型コミュニティです。みんなが気持ちよく利用できる場にするためにご利用前には利用ルール・禁止事項をご確認いただき、投稿時には以下内容をもう一度ご確認ください。
上記すべてをご確認いただいた上で投稿してください。
まだコメントがありません