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匿名
毎年およそ3千件の刑事事件が裁判員裁判の対象にあたり、このうち約2割が強姦致死などの凶悪な性犯罪。しかし、日々の新聞記事の中では、ほとんど目にすることがない。ニュースキャスターの辛坊治郎氏は、日本の抑制的な性犯罪報道について疑問を投げかける。
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何故これがベタ記事なのか全く理解できない。ベタ記事どころか、関西で編集発行される全国紙をざっと見た限りでは、このニュースは朝日新聞の社会面にしか掲載されておらず、他のメディアは完全に無視した。
判決文から事件の概要を拾ってみよう。
「神戸市北区の無職大原高光被告(24)は、2010年5月から2010年の10月にかけて、神戸市内で4歳から8歳の女児5人を公園の木陰や団地の空き室に連れ込み、わいせつ行為を繰り返した。女児の顔にカッターナイフを近づけ、『パンツを脱げ』と脅したこともあった。いずれも裸の写真や動画を撮影し、『写真をばらまく』などと脅して口止めしていた」
強姦などの罪で起訴されたこの被告に言い渡された判決は「懲役20年」だ。5人の少女に生涯ぬぐい難い心の傷を負わせた24歳の男は、今後どんなに服役態度が悪くても、一切悔悛(かいしゅん)の情を示すことがなくても、さらにその犯罪性向が矯正されなかったとしても、44歳で確実に出所し、社会復帰を果たす。これが果たしてこの罪に対しての社会的に正当な罰だろうか?
それにしても、関西でニュースキャスターをやっているにもかかわらず、判決を報じる小さな記事がきっかけで事件の全容を知った我が身を恥じる。
被害者の人権を守ることと、その犯罪自体を「なかった」ことにして闇から闇に葬ってしまうことは違う。もしこの事件が発覚した時点で、被害者の人権に細心の配慮をしながら、どんな犯罪が起きていたのかを詳しく報道していたなら、犯罪者にはそれにふさわしい罰が与えられていたのではないかと悔やむ。
※週刊朝日 2012年8月31日号
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