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- 鶏飯
- 17/05/17 13:42:33
「なぜ重いかばんを毎日持って、登下校しないといけないのでしょうか」。福岡市の中学生の保護者から、そんな声が教育取材班に寄せられた。
学校の指定かばんに教科書やノートなどを詰め込むと、10キロにもなるのだという。周りの保護者に尋ねると、同じ思いを抱えていた。背景には何があるのだろう?
■教科書、ゆとり時代の1・5倍
福岡市の中学3年女子を訪ね、かばんを見せてもらった。学校の指定かばんは、大人の会社員がよく使っている「1泊2日出張用」サイズ。縦37センチ、横18センチ、高さ32センチでナイロンのような素材だ。
「毎朝、重いね。サイアク」。友人とよく、そんな話になる。とりわけ主要5教科が重さの主因だという。(1)教科書(2)ノート(3)プリントをとじるファイル(4)ワーク(問題集)があり、資料集が加わる教科もある。
しかもプリントファイルは、授業が進むにつれ、とじる枚数が増える。最終的には数センチ幅にもなるという。「古くなったプリントは見ないけど、ファイルから抜いていいかどうかは先生次第」。
かばんに全て入りきらず、別の手提げかばんで持ち運ぶこともあった。
「入学したてのころは、体がゆがまないよう、両肩で持つよう言ってました」と母親。かばんには、リュックサックのような両肩用の取っ手、肩掛け用のひもがあるが、両肩で持つのは年頃の女子たちに「ダサイ」と不評。
女子生徒も中学2年のころから肩掛けに変えたという。
これに部活動用のかばんが加わったりすると、雨風の日は大変だろう。荷物が重いなら学校に置けばいいとも思うのだが、学校現場ではこれを「置き勉」と呼び、禁止しているケースが少なくないという。
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■学力強化へ、プリントも増え
複数の教員に尋ねると、置き勉禁止の主な理由は二つだった。(1)教科書やノートを持って帰らないと自宅学習しない(2)学校に置いたままだと、別の生徒が勝手に使ったり、いたずらしたりする可能性がある。
置き勉をするとどうなるか。クラス担任や見回り担当の生徒が教室内をチェックし、教科書やノートを見つければ、そのまま没収。生徒は教員に謝罪し、返してもらうのだという。
それにしても、最近の教科書は重たい。福岡教育大の図書館に行き、2002年から本格導入された「ゆとり教育」のころの教科書と、学力強化に向け学習内容が増えた現在の教科書を比較してみた。
複数の会社が出版しているため、同大職員に1社ずつ選んでもらい、国語、数学、社会、理科、英語5教科の教科書をそろえて重さを量った。
「ゆとり」時代は1・8キロ(上下巻に分かれていた理科は上のみ)だったのに対し、現在は2・6キロと約1・5倍になっていた。
07年に全国学力テストが復活してから、学力志向が強まり、ファイルにとじるプリントも増える傾向にある。福岡県内の50代教員は「自分が中学生のころ、教材にファイルはなかった」と振り返る。かばんは重くなるはずだ。
■「置き勉禁止」見直しの動きも
こうした事情を考慮し、置き勉禁止ルールを緩和する学校もある。福岡県内のある中学校では今春から、置き勉禁止の対象を主要5教科の教科書とノートだけにしたという。
「かばんが重すぎる」という保護者からの指摘に加え、最近は学校指定かばんの底や肩ひもが破損する事態も発生。学校がやや高台にあることも考慮し、ルールを見直したという。
「『体力育成につながる』と言う先生もいたけれど、何だか子どもたちに重労働を課しているようでもあった」。50代の教員はそう打ち明けた。
2020年度から小中高校で順次導入される新学習指導要領に伴い、子どもたちの教科書のページ数は増え、かばんはさらに重たくなりそうだ。
置き勉を巡っては、「一人許せば規律が乱れる」という教員に対し、「持って帰っても勉強に使わない」という生徒の声も。一律、前例踏襲ではなく、もっといろんな知恵があるのではないか。
先生たちばかりではなく、生徒や保護者を交えて一度、話し合ってみてはと思う。
荷物で膨らんだかばんを肩に掛けた中学生。肩が凝ることも少なくないという
5/17(水) 10:44配信
西日本新聞社
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