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- 17/01/18 11:02:45
■カジノ解禁で生活保護受給者を縛る前に考えるべきこと
昨年末に成立したカジノ法に関し、生活保護受給者の入場禁止が検討され始めている。しかし、そもそも日本でカジノは採算がとれるのか。有効なギャンブル依存症対策はあるのか。規制の前に根本からの再考が必要ではないか
明けたばかりの本年2017年は、生活保護制度に大きな変化が訪れる年となるかもしれない。ほとんど報道されていないが、2017年には生活保護法の再度の改正、および生活保護基準の見直しが予定されている(2016年3月 厚生労働省 社会・援護局関係主管課長会議資料PDF13ページ)。
2017年には、2016年12月に成立した「カジノ法」こと統合リゾート(IR)推進法(連載第74回参照)を具体化する実施法が成立する可能性もある。日本維新の会は、カジノ法を受け、生活保護受給者のギャンブル・風俗・totoくじを禁止する法案を国会に提出している(日本維新の会:目指せ法案100本提出)。ギャンブルに関心のない私は「カジノをつくるのをやめれば、そんな人権侵害はしなくて済むのに」と思わずにいられない。そもそもカジノは、なぜ日本に必要なのだろうか。
カジノ法制化・誘致に関するポータルサイト「カジノIRジャパン」の「みんなのIR・カジノ Q&A」によると、日本の観光業は潜在力が極めて高く、カジノを含む統合リゾートは「国家の戦略的な国際観光政策の有力な手段」であり、「魅力的な観光地の形成」が可能になり、「それに伴って地域経済を活性化」できるということだ。
また、政府が2030年までに見込んでいる訪日外国人観光客は、2015年から2020年までに2000万人、2020年から2030年までに1000万人、合計3000万人であるという(Q7)。統合リゾートによる効果のうち最大のものは、施設やインフラの建設・整備、直接間接の雇用創出、国内外の観光客増加、カジノ収益による地域活性化であるという(Q8)。
確かに、大型高級リゾート地にだけカジノがあり、比較的富裕な外国人観光客が客の大半を占め、金離れよく遊び、特にカジノで大きな消費を行ってくれるというのであれば、日本人一般にとって、害より益のほうが大きい話になるかもしれない。
しかし、ビジネスとしてカジノを成り立たせようとするのなら、比較的近距離の住民が利用者にならなければ、経営を安定されることは困難なのではないだろうか。テーマパークを例として考えてみよう。東京ディズニーランドも大阪のUSJも、全国および近隣諸国の観光客に人気のテーマパークだが、何らかの事情で遠くからの客足が途絶えても、ただちに経営が危機に瀕するわけではない。関東圏あるいは近畿圏の住民による「安・近・短」の日帰り観光需要が見込めるからだ。
問題は、USJや東京ディズニーランドならば1万円あれば大人1人が1日じっくり楽しめるのに対し、カジノは10万円が一瞬で消える可能性もある場だということだ。生活保護費の用途は、趣味や娯楽に使うことも含めて本人の自由なのだが、法や制度で「縛る」ことの是非はともかく、低所得層の人々にとって、カジノはもはや「娯楽」と呼べるものでさえないだろう。
>>1 カジノの見込み客は外国人ではなく日本人という現状
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