• No.47 玉石

    25/09/28 13:01:37

    ――かかる御集ひにては、童どもの声、絶え間なく、座敷は波立つ水のごとく騒がしくぞ侍りける。

    義兄の御子らは二歳、四歳、八歳、十歳の四人にて、まことに奔放に走り騒ぎ、物を奪ひ、意地悪なども憚らずなすに、大人たちはただ笑ひて咎め給はず。「慣れさせよ」と冗談まじりに煽る声さへあり。

    わが子らは、零歳と二歳。おとなしく、母の袖を取りて離れざるさま、いと心細げに見え侍り。その姿を、人々は「神経質に育てたるゆゑ」と笑ひ、「子はおのづから育つもの」とのたまふ。タバコは童の手の届くところに置かれ、離乳食の子に使ひ古した匙をもて食を与ふ。はじめての食材も量多く与ふるに、わが持参せる小さき匙を出でしを、また「おもしろからず」と笑はれぬ。

    義兄夫婦は四人を育てて、いままた五人目を迎へんとす。わたしはその逞しさを心より尊きものと思ひながら、彼らは「二人しか育てておらぬ」と鼻にかけて嗤ふ。言の葉のひとつごとに、心は痛み、自己の影は沈みゆくばかりなり。

    されど、わが子らの大人しく、意地悪をも声荒げて報いぬ姿は、むしろ徳の芽生えにして、尊きものと母の胸は知りぬ。騒がしき世にあへど、静けさを守るは、またひとつの力ならむ。

    ――夕つ方、障子にさし入るる光のなかにて、膝に寄り添ふ二つの命の温もりを覚ゆるとき、心ひそかに誇りを取り戻しぬ。

    かかる思ひを歌に詠めば――

    世の中の 騒ぎにまじらず わが袖に
    しづけき命 守りてぞ経る

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