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中国の若者 「私たちは死人だ」中国は就職超氷河期に 人気ある公務員職は競争率6000倍
2023年07月19日
まるで「死人」のようにグッタリと地面に倒れ込む、異様な写真の数々――。今年6月以降、中国のSNS上に次々とアップされた一連の投稿には「ゾンビスタイル」というハッシュタグが付けられ、欧米メディアも取り上げるなど国内外で話題を集めている。
中国事情に詳しいジャーナリストの中島恵氏が話す。
「中国の大学の卒業シーズンは6月から7月にかけてですが、学生たちの間でいま、ゾンビスタイルで卒業写真を撮ることが秘かなブームになっています。写真の意味するところは“私たちは半分、死んでいる”との自虐表現。背景にあるのが、学生たちにとってはもう笑うほかない“ノーフューチャー”な状況、つまり“超”のつく就職難です」
中国の国家統計局によると16~24歳の失業率は21.3%(6月)と、統計が始まった2018年以降で最悪の数字となった。全世代失業率5.2%の4倍超に達し、若者の失業率だけが突出して悪化している格好だ。
「1990年代後半から中国では大学の新規設立が推し進められ、定員も急拡大。卒業者数は2000年の101万人から、23年には1158万人にまで急増したとされます。中国の大学生の就職難はコロナ禍前から深刻で、ここ数年、就職に有利になるよう“箔付け”のために大学院へと進む学生が増えていました。その大学院生らも卒業期を迎え始めたことで、就職難により拍車がかかる事態となっています」(中島氏)
◆競争率6000倍!
一方で採用する側の企業といえば、ゼロコロナ政策が今年1月に終了したものの、いまだ業績回復途上にあって“青息吐息”のところが大半とされる。
「そのため多くの企業が新規採用にまで手が回らないのが実情です。なかでも学生に人気の高いIT業界が、習近平政権に目を付けられ、巨額の罰金や事業停止に追い込まれた影響は無視できない。政府vs“巨利を貪る”IT企業との構図が喧伝され、政権による業界への統制強化が正当化。結果、中国経済を牽引してきたアリババ集団やテンセントといった大手IT企業ですらリストラに走り始め、学生を雇用する余力を失っています」(全国紙中国総局記者)
習近平政権も国家公務員の採用定員を4年連続で増やすなど対応策を打ち出しているが、受験者数の急増で“焼け石に水”でしかないという。
「地方の村役場でさえ競争率が数百倍に達し、人気のある公務員職では6000倍に達するほど狭き門となっています。中国は日本のように新卒一括採用といったシステムを採っておらず、優秀な学生には企業側から在学時に声がかかる一方で、それ以外の多くの学生はインターンシップを経たり、“数打ちゃ当たる”式に応募してようやく就職するのが一般的。新卒学生にとって就職のハードルは、そもそも低いものではありませんでした」(中島氏)
◆「行商」に出る若者
だったら、いっそのこと「闘うことも望むことも放棄」。“ねそべり主義”が流行した2年前より一段と悪化した社会状況が「究極のゾンビスタイル」を生み出したという。
「最近、中国では“トランク夜市”と呼ばれる、車のトランクに雑貨などを並べて売る若者らの存在が注目を集めています。仕事を失ったり、就職先が見つからない20代を中心に都市部の商業施設の近くなどに車を並べて“行商”しているのです。中国では“上位1%の富裕層が富全体の30%を独占”していると言われ、格差拡大は年々深刻になるばかり。若者たちの間では、習近平政権が掲げる『共同富裕(国民すべてが豊かになる)』とのスローガンは“画に描いたモチだ”として誰も信じていないように映る」(前出・記者)
若者による“サボタージュ”は各種統計値にも表れている。中国民政省によれば、22年の結婚件数は約683万件と、13年時とくらべ5割近くも減って「過去最低」を更新。合計特殊出生率も日本と変わらない「世界最低水準」にとどまっている。
「鬱屈した思いを抱える巨大な若者の一群は社会不安の芽となっているだけでなく、ネットやSNSを通じて海外とも繋がる彼らの動向に、習近平政権も神経を尖らせています。対応を誤れば政権の浮沈にも影響しかねませんが、現状、有効な対策を打ち出せているようには見えません」(中島氏)
「第二の天安門事件」の萌芽となるか。
デイリー新潮
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/07191100
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